自分に自信を持つ方法』(ブレンドン・バーチャード著、 松丸さとみ・夏井幸子・小巻靖子訳、フォレスト出版)の冒頭には、次のような記述があります。

世の中にはもっと素晴らしい何かがあることをあなたはわかっている。(中略)つまり、自信に満ちあふれた人生──生きることに対しての活力、熱意、情熱がすべて高いレベルにある状態──をあなたはすでに体験し味わっているのだ。そうであるなら、あなたが自分や他人、あるいは人生に対して感じている不満や退屈、不安や恐れといったマイナスの感情は、幼少時代の成長過程や現在置かれている環境とはいっさい関係がない。人生に熱いものが欠けているのは、人生戦略そのものが間違っているからだ。(「序章 あなたの人生を変えるための決意」より)

だからこそ著者は本書を通じ、「最高の人生を送るよう迫る戦略的プランを立てるための術」を伝えたいのだと主張しています。基本的な考え方に触れている第1章「暗闇から抜け出る」を見てみましょう。

満たされた人生を生きる人とは?

著者は、満たされた人生を生きている人を「充実している人」と呼んでいるそうです。ただし、充実している人とは生まれつきなにかの才能が備わっているわけではなく、「あなたや私と同じような人たち」だと断定してもいます。また、彼らが違って見えるのは、どんな状況に置かれようと活力に満ち、熱意と情熱にあふれているからだとも。

とはいえ、そうあることは決してたやすいことではないでしょう。だから彼らは常に自分の態度や状況に意識を向けるように努め、そのエネルギーレベルを保つために努力しているのだそうです。そして、その結果として満たされた人生を生きている人には、次の7つの特性が見られると記しています。

1. 先入観を持たず、じっくり観察する

過去の情報だけにとらわれず、現状を認識して受け入れる。好奇心、自主性、柔軟性を発揮しながら周囲の世界と関わっていく。物事の意味を急いで判断せず、思い込んだりしない。忍耐強く寛大で、受容性に富み、状況を創造的に理解する。そして、いまとじっくり向き合う。

2. 未来志向である

大きなビジョンと願望を持っている。描く構想は常に詳細で、実現に向け積極的に取り組んでいく。未来に対して楽観的で、望み通りの展開を引き寄せる。思い描く未来に心を躍らせ、夢を現実に変える力が自分にはあると信じている。いまある問題も解決できると考え、未来をより良いものにするため努力を重ねていく。

3. 挑戦を求める

新たな挑戦に喜びをおぼえる。能力を充分に発揮して自己表現、自己実現をしたいという思いを持ち、そのためには挑戦が必要なことも知っている。そして、どんな挑戦も受けて立つ用意ができている。成長という不確かなプロセスの中でも楽しみ、遊び心を発揮する。

4. 人に関心があり、本物の関係を築く

人が大好きで、強い関心と敬意を抱いている。人が語る夢や恐れ、日常の生活にじっくりと耳を傾ける。人にしっかり意識を向け、コミュニケーションをはかり、友人や家族と深い関係を築く。よく考えて人と話をし、うわべだけのつきあいはしない。人とつながり、学び、成長し、自分自身の一部を分かち合うチャンスととらえている。つまり、人生において人間関係は重要であると考えている。

5. 独立独歩である

独立心が強く才覚がある。我が道を行き、進路を変えることは望まない。自分の価値観を曲げてまで、まわりのすべての人を幸せにする責任はないと考えている。頑固で利己的な一匹狼と見られることも多いが、自分で進路を定め、新しいアイデアを試し、失敗もいとわず、自分で解決策を見つけながら進む。

6. 創造性を重視する

自由な表現を大切にしている。仕事、キャリア、プロジェクト、目標、チャンスに対し、創造性や表現力を発揮できるかどうかを考えている。自分の創造的な面を積極的に働かせ、自分らしい表現を考える。自分のスタイルを堂々と示し、自分の成果を人と分かち合うことに誇りを持っている。

7. 意義を大切にする

日々の意義を大切にし、人生においても意味のある時間をつくり出したいと願っている。全体像をしっかりととらえ、自分の情熱や人生の目的に結びついた、価値ある目標を達成するために努力する。どんな意味を持つのかを常に考え、苦労も成功も肯定的に解釈する。人と一緒に意味のある時間や思い出をつくることを心がけ、贈り物やユニークな体験、愛情や賞賛、感謝を表す心のこもったことばで人を驚かせる。(以上45ページより)

いまはまだ、「鳥かご」の中にいても大丈夫

これらの条件をすべて満たしている人はなかなかいないと思いますが、その一方、著者は興味深いことも記しています。

満たされた人生を生きている人の多くは、かつては鳥かごの中の人生、あるいは適度な環境に生きる人生を送っていた人たちだ。(49ページより)

しかし、彼らは「自分を変える」と決め、そう決めたときに人生も変わったのだということ。そして、もっと自信に満ちた、生き生きとした人生を送りたいと考え、その望みを叶えるために努力したわけです。つまり、決してオールマイティではない。先に触れたとおり「あなたや私と同じような人たち」でありながら、努力を怠らなかったために暗闇から抜け出せることができたということ。

だから著者は、満たされた人生を送ることは、私たちにも可能だと断定しています。意識的にそれを選択すること、そして一貫した行動によって、それは可能になるのだといいます。その第一段階として、上記の7ポイントを意識しながら日々を送る。それは決して無駄なことではないでしょう。

このような観点に基づき、次章以降では満たされた人生のための「10の行動意欲」についても緻密な解説がなされています。そちらも併せて吸収すれば、いま以上に自分に自信の持てる、満たされた人生を歩んでいくことができるかもしれません。

(印南敦史)