参院選挙の惨敗を受け、党内議論を行い党改革を進めている民主党の現状をどう見るか。今の政治状況のなかで民主党が果たすべき役割は何か――等について政治評論家の森田実氏に聞いた。

 ――民主党の現状をどう見るか。
政治評論家 森田 実(もりた・みのる)

政治評論家 森田 実(もりた・みのる)

 「民主党はどん底を越えた」――これが私の見方です。政党において最も重視すべきは精神的要素だと思います。みんなが自分のことのみ考え、足を引っ張り合っていたら、政治活動は成り立ちません。民主党は2012年12月衆院選、13年6月東京都議選、13年7月参院選で3連敗しました。この過程で多くの同志が民主党を離れました。他党へ移った議員もいます。政界から去った者もいます。さらに、依然として次の自分個人の選挙を考えて、新党結成を考えている者がいます。新党結成の時期としては、早くて14年12月、遅ければ15年12月を考えている者が少なくないようです。

 しかし、このことは、現執行部にとっては、1年4カ月の時間的余裕があることを意味しています。物事は考え方ひとつです。この1年4カ月の間に民主党を立て直すことができれば、14年12月、15年12月の新党結成への動きを防ぐことができます。民主党が立ち直れば、16年夏の参院選(衆参同日選の可能性あり)と16年12月までに行われる衆院選において、自民党と決戦することが可能になります。逆転は不可能ではありません。民主党は最低最悪のどん底を越えたことに自信を持つべきです。

平和と民主主義と基本的人権尊重の政治を回復させる

 ――今の政治状況のなかで民主党の果たすべき役割は何か。

 ズバリ申します。度重なる勝利で傲慢(ごうまん)になって反平和・反アジア・極右強権政治に向かっている安倍政権の暴走を止め、平和と民主主義と基本的人権尊重の政治を回復させることです。このためになすべきことの第1は、野党に徹することです。安倍政権への協力的な姿勢を改め、野党・政権批判勢力の中心勢力としての自覚を持って、安倍首相との徹底的対決の路線を採ることです。

 第2は、安倍政権が進める内閣法制局長官という一官僚の首のすげ替えという姑息(こそく)きわまりない非常手段による解釈改憲、集団的自衛権行使容認への暴走を止めることです。解釈改憲は非合法な手段であり、憲法の否定であり、民主主義の蹂躙(じゅうりん)です。

 集団的自衛権の行使を容認するため安倍政権に協力しようと考えている民主党議員がいるかもしれませんが、このような利敵行為に走ろうとする議員に対し、執行部は離党を勧告し、従わない場合は除名処分を行うべきだと思います。

 安倍首相は今年8月15日の首相の言葉で、事実上、村山談話の平和路線を否定しました。従来、首相は8月15日の談話においては戦争への反省と不戦の誓い、アジア諸国への謝罪を表明してきましたが、今年安倍首相はこれを口にしませんでした。このことはアジア諸国の不信と反発を呼び起こしています。民主党は、今こそ、平和の守り手であることを、日本国民だけでなく全世界に向かって示すべき時です。

 大自然の猛威による自然災害が広がっています。こんな時、安倍首相は夏休みを取り、側近とゴルフを楽しみました。許されざることです。民主党議員は、いまこそ、被災者支援、被災地復旧・復興の先頭に立つべきです。

 なすべきことはいくらでもあります。大切なのは徹底的な現場主義に基づく実行、実践です。ここに民主党がどん底からはい上がる唯一の道があると思います。

不屈の楽天主義に立ち、未来を創るため大同団結する

 ――民主党はどうあるべきか。

 第1は、不屈の楽天主義に立つべきです。中国に「良馬は後ろの草を喰わず」という諺(ことわざ)があります。良い馬は後ろを振り返らないのです。積極的に国民大衆の中に入るべきです。「人民の中へ(ヴ・ナロード)」です。なすべきことは多々あります。

 次の衆院選での政権奪還、次の参院選で第1党への回復を目指すべきです。このためには、欠員のある選挙区で候補者を早めに決める必要があります。いまから1年間かけて、「それでも民主党でやろう!」という情熱と社会的責任感と知力をもつ若い政治家志望者を公募し、選挙区ごとの党員投票をもとに候補者を決定すべきです。大敗北した今こそ、民主党全体の世代交代を図り、「新しい民主党」をつくり上げるべき時です。

 第2は、公明党との関係修復を図るべきです。民主党と公明党には政策上の相違点は少ないと思います。中央・地方とくに地方において「民主・公明」の協力関係確立に努めるべきです。平和の党という点でも民主党と公明党は共通しています。外交政策においてもっと協力すべきです。

 第3は、執行部のもとに団結すべきです。過去へのこだわりすぎは危険です。未来を創るために大同団結すべきです。大切なのは地道な努力です。民主党の党風を「地道主義」に変える時です。

(プレス民主9月6日号より)

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