DMC book

□ND
3ページ/3ページ



野菜、魚、フルーツ、さまざまな香りが入り混じった朝市。
早いフォルトゥナの朝を活気づける商売人達の威勢のいい声や朝独特のこの雰囲気が、新米は嫌いではなかった。
両側に広がる店から前を歩くネロの背に視線を戻し、はぐれないように少し空いていた距離を小走りで埋める。
隣ではなく少し後ろ、それがネロと新米の距離だった。



「あら新米君!今日は良いトマトが入ったのよ、見ていかない?」
「こっちの魚も見てきなよ!若いのにはサービスしてくぜ!」



すっかり顔も覚えてもらって、店の前を通るたびに声をかけてもらえる。
魚屋の方はネロに任せ新米は鮮やかなトマトを手に取った。
テントの影から日の光が当たる所に出すと、つややかに光を返すトマトはいかにも美味しそうで新米はこれ4つくれと八百屋のおばさんに笑いかける。
良い笑顔だともう1つトマトといくつかの野菜をおまけしてくれたおばさんに軽くお礼を言って、隣のネロを見るとネロも何やらたくさんおまけしてもらったらしく大きめの袋を抱えていた。
お互いの戦利品を見て吹きだしながら、またさっきのように通りを二人で歩く。



初めて買い出しに来た時、買い出し担当はネロと若と新米の三人だった。
買い物は若者担当だと言い放った年長組に最初でこそ反発したものの、この大人達にに財布のひもを握らせてはいけないと悟ったネロが若と新米を説得してなんとか決まったのだ。
バージルは毎日の朝食担当なため除外となったのだが、そのことでまた若とネロが火花を散らしたりと大変な騒ぎとなったのだが詳しいことは割合する。
その後若の買い食いの多さにあきれたネロが買い出し担当から若をリストラし、ネロと新米の2人に落ち着くこととなったりもするが、それについても詳しく話すと長いので割合させてもらおう。




「あとなんか買うもんあったっけか?」
「んー・・・ベーコンもトマトもパセリも買ったし、もう特に無いと思う」
「そっか、んじゃ帰るか」
「おう」



メモを見ながら買い残したものは無いかチェックする。買い忘れてはいけないものを大雑把に確認して多分大丈夫だろうと結論を出すと、眠たそうに片目を擦るネロに少し笑みがこぼれた。
人の多い道を外れ、先程までの喧騒が遠くなる。
少し前を歩くネロの揺れる猫毛を見つめながら新米は紙袋を持ち直して後ろを歩く。
気を張る仕事柄のせいか、背後の気配には自分も含めみな敏感だ。逆賊スパーダの血族の噂を聞きつけ遠路はるばる魔界からいらっしゃる悪魔だってたまにはいる。すごくたまにだが。
とまぁそういった環境の中で、背後に立っても警戒されないということはすごく意味のある事だと新米は思っている。他のダンテには許容しない距離も、新米なら許容してくれる。信頼されているのだと感じる、それが新米にとってたまらなくうれしいことで。



「…ま、本人には絶対言わないけど」
「ん、何か言ったか?」
「いやなんも?」




理由なんてそんなもの
(恥ずかしくて言えませんけど)








ネロの後ろ歩く新米って、良いよねって話。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ