UPDATE1: 今年度国債発行は44兆円にこだわらず、財政健全化目標は再設定=麻生財務相

 [東京 27日 ロイター] 麻生太郎副総理兼財務・金融・デフレ脱却円高対策担当相は27日未明、初閣議後に記者会見し、今年度の国債発行について、民主党政権が定めた44兆円の発行枠に「こだわらない」との考えを示した。同時に財政健全化目標も、新政権下で策定し直す方針を明らかにした。
  <補正予算、首相が「思い切った規模」を指示>
 安倍晋三首相はこの日、財務相に対して「経済再生を実現するため緊急経済対策を早急に策定し、今年度補正予算は国債発行枠44兆円にこだわらず、思い切った規模とすること」と指示。財務相は補正予算の規模について「数字で言える段階ではない」と言及を避けたが「政権が代わり、経済対策、デフレ不況対策、雇用対策等々に、財政出動、金融緩和、経済成長戦略の3つをまとめてやる方向になったと思ってもらえる補正を組むのが大前提」だと指摘。「44兆円(の発行枠)にこだわらないことは間違いない」と表明した。財務相は「基本的に景気が良くなったと思ってもらうのが第一。優先順位の一番はそれだ」とも述べた。
 財政健全化に関しては、国債の大半が国内で消化されている現状に触れ「ギリシャみたいになることはあり得ない」とし、健全化目標も「自民党政権で基本的なものを作らねばならない。民主党政権がやったものを、そのまま模倣することはない」と述べ、見直す考えを示した。
 安倍首相は来年度の予算編成について「財政健全化目標を踏まえたものとすること」と指示した。
  <脱「デフレ不況」>
 財務相は日本経済の現況を「資産のデフレーションによる不況に遭遇している状況から、まだ脱却していない」と分析。デフレ対策の必要性を強調したが、同時に「デフレ対策をやっ(て解決し)た経験者は世界中でゼロ。それが事実。これまでの反省も踏まえ、デフレ不況からの脱却に全力を挙げる。それが国民の負託に対する答えだ」と話した。
  <国家の通貨切り下げ、できないルール>
 円高対策については、これまでのG20で「国家が介入して、通貨を一方的に切り下げるとか上げるということは、できないルールになっている」と指摘。G20が定期会合を開催し始めて以降、円高が進行しているとして「日本は間違いなく約定通りやっている数少ない国との自負がある。各国がめちゃめちゃにならないようにするには、我々はきちんとやってるとはっきり言うのが大事なことだ」と話した。
 今回の総選挙で自民党の優勢が伝えられて以降、円安が進行したことには「為替は一概にこうなると言える話とは違う」としながらも、自公政権に対する「期待値のひとつであることは確か」として「口先介入でいい方向に行けばしめたもの」と述べた。
 ただ、経済政策運営は「日銀、財務省、成長戦略を組む経産省等々が一緒になってやる」とも表明。「日銀がお金を刷っても、それを必要とする実需に回らなければ、お金は銀行で寝たことになる。そういう失敗が2000年代に入ってある。そういう轍は踏まないよう(金融と財政、成長戦略の)3つを合わせて一緒にやる政治力がないと、対応は難しい」と話した。
  <日銀との連携、諮問会議でより密に>
 日銀と政府との関係については、日銀総裁と首相が定期的に出席する経済財政諮問会議を休止させたことが「連絡が密でなくなった一番大きな理由」だと総括。「諮問会議がスタートするので、連絡・連携は今までに比べればかなり密になる」との見通しを示した。
 日銀側にとっても、金融緩和を実施した以上は「財務省は財政出動、成長戦略はやってもらえるのかと言うのは当然。そのために諮問会議は重要なものだ」と述べた。
  <消費増税、景気上向かねば引き上げず>
 消費税率の引き上げについては「基本的に景気が上向かなければ上げないと(増税法の付則に)書いてある」として、過去の引き上げ時に税収が減少した経緯を説明。「これは経験則で、それほど昔の話ではない。安易に上げることにならないようにするため、きちんとした補正や本予算を編成し、景気が良くなったとの感じが出てこない限り、間違いなくまた同じことになる。そうならないような配慮が必要だ」と述べた。
 (ロイターニュース 基太村真司:編集 石田仁志)

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