中部電力が関東へ進出、東京電力より3割安い料金で攻勢電力供給サービス

これまで地域独占状態が続いていた電力市場が自由競争へ動き始めた。中部電力が関東を中心に事業展開する新電力のダイヤモンドパワーを買収したうえで、静岡県に10万kW級の火力発電所を建設する。東京電力と比べて大幅に安い電気料金を武器に、企業向けで攻勢をかける。

» 2013年08月09日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 全国各地で電気料金の値上げが相次いでいるが、中部電力は安い料金をキープし続けている。隣り合う東京電力と比べると、毎月の使用量に応じて課金する「電力量料金」に大きな開きがある。特に企業向けでは、東京電力の単価は中部電力の1.3倍以上も高い(図1)。

 電気料金の増加に悲鳴を上げている関東の企業や自治体にとっては、許容しがたいほどの差がついている。できれば中部電力に契約を切り替えたい――そう期待する声にこたえるかのように、ついに関東へ進出する動きを開始した。

図1 東京電力と中部電力の電気料金。用途別に標準的な契約メニューで比較

 三菱商事グループの新電力であるダイヤモンドパワーの株式を80%取得して、東京電力の管内で電力を販売できる体制へ移行する。さらには電力の供給力を増強するため、東京電力の管内に隣接する静岡県に10万kW級の中規模な石炭火力発電所を2016年5月から稼働させる予定だ(図2)。燃料費の安い石炭を使って、低料金の電力を供給できる体制を強化する。

図2 中部電力を中心にした新事業のスキーム。出典:中部電力

 すでに東京電力の管内では自治体を中心に、料金の安い新電力へ契約を切り替える動きが広がっている。新たに中部電力から供給を受けるダイヤモンドパワーの競争力が高まることで、こうした動きが加速することは確実だ。

 日本の電力販売量の3分の1が集中する東京電力の管内で自由競争が活発になれば、日本全体で電力市場の改革が進んでいく。多くの電力会社が原子力発電所の再稼働に必死に取り組んでいるあいだに、原子力を必要としない新しい市場構造が着実にできつつある。

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