「五輪、宇宙開発と並び重視」 オメガ社長に聞く

ロンドン五輪で競技の「時」をつくる役割を担うのがオメガだ。レースではタイム、演技では時間を取り仕切る。国際オリンピック委員会（IOC）の「TOP」スポンサーでもあり、計時を務めるのは今回で25回目。五輪の魅力やオメガの戦略などを同社のスティーブ・ウルクハート社長（66）に聞いた。

■ボンドは95年からパートナー

――ロンドンでの五輪の計時担当は1948年以来2度目となる。

「48年大会は写真判定を導入するなど近代的なタイムキーピングの始まりだった。ロンドンは特別な場所。世界に誇る歴史的な会場で試合が行われるのは素晴らしいことだ」

――成熟した都市での五輪開催の経済効果をどうみるか。

「英国はいいマーケットだ。以前はロンドンだけが突出した市場だったが、10年ほど前からマンチェスターやリバプールなどでも発展が進んだ。英国とオメガには強い結び付きがある。ジェームズ・ボンドは95年からのパートナーだ」

「具体的な対策としては、五輪開催前に市内で7つの店舗を開業した。サッカーや自動車などほかのスポーツと違って、五輪はいろんな競技があり、世界中が参加できる。五輪には、地元向けマーケットと観光客を相手にするマーケットが共存している」

■五輪との結びつき、将来も変わらず

――五輪はマーケット戦略を一気に加速させるツールか。

「確実にそうだ。感情的なメッセージを訴えることができるので、特別な戦略となり得る。オメガは飲料などの他のスポンサーとは違う。オフィシャルタイムキーパーとして非常に重要な役割を担っている。五輪との関係には歴史が深く、ほかの企業はオメガのような仕事はできない。ソチもリオも平昌もその次も立場は変わらないだろう」

■すべての街に可能性ある

――オメガといえば高級腕時計だが、計時との技術の相関性はどこにあるのか。

「腕時計と計時の技術は全く違う。ただ、思想的には同じだ。時計にかける情熱、歴史があって、情熱を注いで技術を開発してきたというメッセージを出すことができる。今回も新たな技術を導入している。宇宙開発とオリンピックはオメガにとっての大きな2つの要素だ」

――協賛社としては、五輪はどういう場所で開催してほしいか。

「開催地はIOCが決める。IOCはいろんな要件を勘案して選択するが、少なくとも、マーケットがない場所は選ばない。北京は成長著しい市場だったし、ロンドンには成熟した魅力がある。2016年のリオ大会では新市場の開拓を求めることができる。すべての街に可能性がある」

■20年大会、東京開催を望む

――20年大会には東京も立候補している。

「東京は成熟したマーケットで戦略を考えやすい。私自身としては、イスタンブールより、マドリードより東京での開催を望んでいる。日本は今後、期待が持てるマーケット。オメガが勢力を伸ばす自信はある」

――日本での今後のマーケティング戦略は。

「基本的にはこれまでと変わらないが、日本人は伝統と新しさという対比する2つのものを好む。その両方の感情を満足させるような展開をしていきたいと考えている。腕時計はブランドという夢を売るビジネス。オメガの価値を伝えていきたい」

（聞き手は北西厚一）