「日没国物語」


「日没国物語」ー新ユートピア  原 秀雄著
久しぶりに読んでみた
トーマス・モアの「ユートピア」を
日本に置き換え子どもが読めるように
物語の本にしたものだ



 トーマス・モアの作った言葉「ユートピア
「どこにも無い」という意味だ
どこにも無い理想の社会、原始的共産世界 
自分という個人が主体の世界
物欲をなくし私有物を放棄し
みんなが平等の価値観を持ち
共に笑いあえる社会、本当にあるのだろうか



 「日没国」は日本が第二次世界大戦に敗戦した時に生まれた
日本に乗り込んできた連合国は何故か
日本の領土を北緯38度付近で分割し
その北側を実験的に厚い壁で囲い放置してしまった



 数十年後 繁栄をとげる「日本国」から
モリ・ヘイシという小学生が
その国境の厚い壁を乗り越え
もう一つの国「日没国」に入り込み
そのユートピアを見聞するという物語だ

  絵たむらしげる



 その「日没国」は農業を主体とし
みんながみんなのために暮らしている
お金を使う必要も無く
個人の財産はもちろん
みんなの財産とし、そこに住むみんなが
お互いに助け合い暮らしている



 その中で少年は自分達の社会
繁栄と物欲にあふれた自分の世界
とは全然違う理想の社会に目覚めていくという話なのだが・・・



 僕は途中で読めなくなった、随分前の話だ
今回も途中で挫折した
あまりにきれいごと過ぎて読めないのだ
だんだんイヤになってくる
たぶんそれは僕自身の中に
こんな国なんて無いんだという思いが強いからなのか
物語としても読めない
物語というよりもユートピアの子ども版入門書とでも言えばいいか
まッ600ページ 本の厚さ5cmに
えんえんとユートピアの生活が
描かれているというのもあるけれど



 まず僕が一番最初に思ったのは
俺はたぶんこの国では生きていけないだろうな
やっぱり人間って欲の固まりなんだ
この日没国で暮らせば幸せにはなるだろう
でも人間の持ってる欲求というのは
そんなに無くせるものだろうか



 この本は敗戦という機会?を利用し
どうにもならない状況を作り
その中にユートピアを作っていった
その中の住人達が新しい国を作るという
その過程は物語の中にもあるのだけれど
そういうシチュエーションがなければ出来ない社会なのだ
そしてその中で生まれた子ども達
そういう社会を当然のことのように受け入れていく
外界と遮断された世界
そいう環境でしかユートピアは存在しないのだ
だから「どこにも無い」といえるのだろうか




 でもユートピアは無いけれども
理想としてのユートピア
僕たちが生きていく指針として
常に持ち続けていなくてはいけないものではないかと思う


たむらしげる



 もう一度その本の厚さにまけないように
また読んでみたいと思っている。