借り逃げ 1

探偵日記 6月27日木曜日晴れ

昨日とうって変わった晴天。僕は晴れやかな気持ちで理容室に行く。日々抜け落ちる頭髪に気をもみながらマスターに(何か良い方法はないか?)聞いてみる。答えは何時も同じ、「最近、植毛の会社が良く宣伝していますが、手術をすれば何年もつっていう例が無いのでどうでしょうか」実は数年前、友人に勧められてその会社に行ってみたことがある。僕の頭をモニターで見たドクター曰く、「貴方は4000本必要です。お値段は250万円です」と言う。競馬か宝くじが当たったら来よう。(笑)

借り逃げ 1

新件の話。世の中悪い奴もいる。経済界やスポーツの世界で名の知られている人物だが、ある人(僕の依頼人)から7000万円借用し、今日に至る数年間、一円の返済をしないばかりかまたく知らん顔だという。二人はその昔、00ちゃん。と呼び合う仲だったらしい。依頼人は、そうした信頼関係に基づいて、店のオープン費用に5000万円、自宅の改修費用に2000万円を貸した。当時依頼人は長者番付の上位に上るほどの人物で、ふんだんな手持ち資金の中から鷹揚に出したようだが、数年を経て状況は大きく変化した。経営する会社が減収となり、いきおい、依頼人の収入も下がった。人は余程でない限りそれまでの生活レベルを落せない。依頼人も、それまで住んでいた11億円のマンションを処分して、現在は5億円のマンションに移った。運転手付きの高級外車で出勤し、プライベートでは一番高いポルシェを乗り回す。しかし、この頃、友人に貸した7000万円を良く思い出す。(あれがあれば、彼女にBMWの新車をプレゼントできるし、貧乏探偵のふくちゃんにも払ってやれる。)と考えたかどうか分らないが、何とか返して貰いたい。と切に思うようになった。

では実際に彼が今どんな生活をしているんだろうか?というわけで、調査の依頼をすることになり、僕がそれを引き受けた次第である。基礎的な調査を行ってみると、世田谷のF町に80坪強の土地があり、90坪の家が建てられている。僕は、(はは~ん、この家の改装資金に2000万円借りたんだな)と思った。しかし、マルヒの彼はこの家に住んでいない気配で、更に調査してみると、赤坂の超高層マンションの一室を購入し若くて可愛い女の子と住んでいた。

K大卒、上場企業の取締役を経て、現在顧問。在職当時よりサイドビジネスの精を出し、今でも数社の代表を務め、某スポーツ関連の利権も持っているとか。決して7000万円を返済できない人物ではない。これから先、どのように調査が進むか分らないが、探偵に徹底的に調べられ、取る態度によっては晩節を汚すことになろう。----------