日航、パイロットの給与大幅引き上げへ 人材流出防止
日本航空は今年4月からパイロットの給与を大幅に引き上げる。乗員の労働組合に年100万~200万円強の給与の増額を提示しており、2月中の妥結を目指す。2010年の経営破綻後、賃金を抑制してきた影響もあり、他の航空会社への人材流出が起きている。将来の競争力を高めるためにも待遇改善が必要と判断した。
日航のパイロットの給与は基本給のほかに資格や経験年数に応じて決まる職責手当と、乗務日数などによって変動する乗務手当などからなる。日航はこのうち職責手当について増額を労組に提示したほか、乗務手当についても改善案を伝えた。
日航の15年3月期のパイロットの平均年収は1636万円とライバルの全日本空輸に比べ約300万円低い水準だった。世界的な旅客需要の拡大に伴い航空業界ではパイロットの争奪戦が激しさを増しており、日航では14年度に機長と副機長を合わせて約30人が転職などで退社している。
国際民間航空機関(ICAO)によると30年には全世界で10年の2倍超の98万人のパイロットが必要になると見込まれている。特にアジアにおけるパイロット不足は深刻で、中国の航空大手の中には年収4000万円を超える条件を提示し他社の機長を引き抜くケースもあるという。
日航は15年の春季労使交渉で賃金を底上げするベースアップ(ベア)を14年ぶりに実施。足元の業績も好調なことから、16年の労使交渉ではパイロット以外の職種やグループ会社でも賃金改善を行う可能性がある。
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