とらドラ・スピンオフ3!―俺の弁当を見てくれ

stars ……一線を越える、ってのは、そういうことだろ。取り返しがつかない、もう戻れないところまで行く、ってことだ。俺はそうすると決めたんだよ。

北村の祖母が作った超豪華三段お重のお弁当を見て、竜児の主婦魂に火がついた!──表題作「俺の弁当を見てくれ」。
忘れものを取りにみんなで忍び込んだ夜の学校で目にする、お馴染みの面々の残念な未来とは──「不幸のバッドエンド大全」。
もしも竜児が定食屋を開いたら、お手伝いは北村でお客は大河と実乃梨だけ!?──「ドラゴン食堂へようこそ」。
などなど海賊本掲載作から各種商品特典まで、文庫未収録の掌編・短編を完全網羅! もちろん書き下ろしもあります。超弩級ラブコメ番外編、再び登場!

[tegaki font="poptai.ttf" color="red"]これが最後のとらドラ![/tegaki]

本編完結から1年……。文庫未収録だった短編に、書き下ろしを加えて最後の短編集がついに刊行。見事な大団円で幕を下ろしたシリーズの、その後が描かれるお話がなかったのは残念ですが、本編のところどころに挿入される小さなエピソードの積み重ねが、季節が巡るにつれて変わっていった、竜児や大河たちの関係を思い起こさせてくれますね。

短編の大部分が、映像作品やゲームの特典として収録されたものだったので、その辺を買われてた方には目新しさがないかもしれませんが、私は全部未チェック、初見だったのである意味ではお得だったのかなと。それなりの数の短編を一気に収録している構成からもわかるように、一編一編のボリュームはかなり小さいので、本当に1エピソードを切り取ったというにふさわしいようなささやかな出来事ばかりが綴られていますね。竜児と大河が春を目前に、ああなってしまう前の、バカをやっていた頃の関係が懐かしくなるようなものもあれば、竜児の母・泰子の少女時代のエピソードなども興味深くありました。というか、その『ドラゴン泰子』の話って、読んでみて何が何だかわからなかったんですが、時期的に、彼女が竜児を身ごもっていた時期の話だったんですねー。あそこから物語が始まったといえば始まったんでしょうけれど、なんか、重いかった……。

最後の短編『ラーメン食いたい透明人間』は書き下ろし。これまたサブキャラの能登と麻耶のふたりのお話。本編の中心人物たちと同じように、片思いな気持ちのすれ違いと、自分の気持ちに気づかないふりをしていた能登が、自分を見てもらおうと踏み出すお話。届かないかもしれない気持ち、けれど、何もしなければきっと後悔するという気持ちを抱えている彼らの距離が、ほんの少しだけ縮まった感じがする、優しげで暖かな、けれどどこか厳しさを残したお話でしたね。これだけまた毛色が変わっている印象でしたが、逆に、本編の雰囲気が一番感じられて懐かしくもありましたね。

このスピンオフの刊行で、ストックされていたお話はすべて世に出たようです。これが本当の完結と思うと残念ではありますが、また、何か機会があれば、このメンバーのお話をどこかで見てみたいですね。

hReview by ゆーいち , 2010/04/15