5月23~24日、エジプトでようやくムバーラク退陣後初の大統領選挙が実施された。専門家たちの事前予想は若干外れ、6月16~17日の決選投票はムスリム同胞団直系候補とムバーラク政権元首相の一騎打ちになることが決まった。今回は大統領選挙第1回投票結果を筆者なりに分析してみたい。(文中敬称略)

順当な投票結果?

エジプト大統領選、決選投票へ

ムスリム同胞団が擁立したムハンマド・モルシ(左)とアフマド・シャフィーク元首相(右)〔AFPBB News

 当初公式発表は5月29日の予定だった。選挙管理委員会が28日、1日前倒しで結果を発表した理由は不明だ。

 一方、3位以下の候補者たちは既に「不正選挙」批判を始めているので、発表数字はあくまで目安でしかないだろう。されば、以下の分析もあくまで筆者個人の「仮説」ということでご理解願いたい。

 各種報道を総合すれば、今回の投票結果は以下の通り。投票率は46.42%だったという。

1 ムハンマド・ムルスィー(ムスリム同胞団直系・自由公正党党首) 24.7% 576万票
2 アフマド・シャフィーク(世俗主義者、ムバーラク政権元首相、空軍出身) 23.6% 550万票
3 ハムダイニ・サッバーヒー(左派、ナセル主義カマーラ党創立者) 20.7%
4 アブー・アルフトゥーフ(ムスリム同胞団元幹部・穏健派) 17.4%
5 アムル・ムーサ(世俗主義者、前政権元外相、アラブ連盟元事務局長) 11.1%

 一般の読者の方は「ムルスィー」「アルフトゥーフ」と言われても区別はつかないだろう。さらに、この5人以外にも選挙前に立候補資格を失った有力政治家が数人いる。

 全員の説明を始めれば読者の混乱は深まるばかり。そこで本稿では難しいことは専門家に任せ、誤解を恐れず、物事を単純化してご説明する。

 要するに、今回被選挙権を得た有力候補者5人は、ムスリム同胞団系2人(同胞団直系と穏健派)と世俗主義者3人(左派ナセル主義者と前政権の元首相、元外相)。

 リベラル・穏健派候補の票は予想ほど伸びず、ムスリム同胞団直系候補とムバーラク時代の元首相が得票した、ということだ。