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「引いて開けるドアを押してしまう」ことから学ぶ良いデザインの基本とは?

By Eugen Anghel

建物や乗り物など、さまざまなものに「ドア」はついています。これには押して開けるタイプのドアや、引いて開けるタイプのドアの他、大きな建物の入り口などで見られるクルクル回転するタイプの「回転扉」に、目の前に立つと自動で開く「自動ドア」など複数の種類が存在しており、用途や場所ごとにそれぞれ使い分けられています。そんなドアを開けるときに時々遭遇する「引いて開けるドアだと思ったら押すタイプだった」という経験に嫌気がさし「ドアってなんて不完全なデザインなんだ……」と思っていたというニュースメディアVoxのライターであるジョー・ポスナーさんが、同じようにドアを「不完全なもの」と考えていたというドナルド・ノーマン氏に優れたドアを作るためのポイントを聞いています。

It's not you. Bad doors are everywhere. - YouTube


ガラスに金属製の持ち手がついたドア


これを引いて開けようとしますが……


押して開けるタイプのものでした。


「PULL(引く)」や……


「PUSH(押す)」などと書かれているドアならばどうやって開けるタイプのものなのかすぐにわかりますが……


このドアは押して開けるタイプのものでしょうか?それとも引いて開けるタイプのものでしょうか?


押して開けるタイプのドアをカギが閉まっているものと勘違いして延々と引っ張り続けた経験が誰にでもあるように……


ドア関連の勘違いは「I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE」や「Silicon Valley」でもネタにされるほど。


そんなドアに対してなんと25年間も不平不満を言い続けてきたというのが認知科学者のドナルド・ノーマン氏。


画像に写っている男性がドナルド・ノーマン氏で、利用者が理解可能なだけでなく誤解や誤動作を起こさないように「モノ」をデザインするべきである、という人間中心設計のアプローチを提唱し、「ユーザビリティ」という概念を初めて明確化した人物として知られています。


ノーマン氏はイングランドのケンブリッジ大学で長年勤務を続けてきたそうですが、彼はそこで「電気のスイッチや蛇口、ドアなどを間違えて使ってしまうこと」にフラストレーションを抱いていたそうです。


そのフラストレーションを基にノーマン氏が書いたのが「誰のためのデザイン?」という本。引いて開けるドアを押してしまったり、押して開けるドアを引いてしまったり、横に滑って開くドアに正面から突っ込んでいったりしてしまうことを、「人間の操作ミス」の一言でくくってしまってよいのか?という点に焦点を当て、人間中心設計のアプローチを提唱した著書です。


そんなノーマン氏は「ノーマンドア(間違ったデザインのドア)」というのは、「実際に行うべき動作と逆のことをユーザーに示しているドア」もしくは「勘違いさせたり、正しく使用してもらうために何かしらの表示を必要とするドア」と定義しています。


「PULL」や「PUSH」と書かれたドアはよく見かけますが、これらもユーザビリティ的な側面からいうと「誰のためのデザインなのか?」をしっかり考え切れていないものとのこと。


そこで重要になってくるのがデザインの基本原理である「discoverability(発見しやすさ)」だそうです。


これは、何かしらものモノを見たときに「これはこうすれば良い」というのが自然とわかること、とのこと。


もちろんこの原理はドアだけでなくあらゆるモノのデザインにおいて重要な考えです。


「今日の多くのコンピューターシステムは、見ただけで何ができるのか全くわからないものがほとんどですが、これは驚くべきことです」


「例えばPCのトラックパッドなどは、1回タップすればいいのか、2回なのか、3回なのか全くわかりません。これらに『discoverability』があるとは思えないし、見ただけではどうやって使うのか知るよしもありません」とノーマン氏。


そしてもうひとつの重要な要素が「フィードバック」です。


「何が起こったのか」や「なぜこのような動作をユーザーがとったのか?」といったフィードバックは非常に重要なものですが、これが活かされていないことが多々あります。


この「discoverability」と「フィードバック」の2つが、現代のデザイナーやエンジニアにとっても非常に重要な基本原理であり……


「人間中心設計」として広く浸透しています。


この「人間中心設計」に習う際に重要なのが、以下の4つの原則です。まずひとつ目が「observation(観察)」で目で見てユーザーがどのような行為をとりうるのかを知ることが重要です。そして2つ目が「idea generation(アイデアを生み出すこと)」、3つ目が「prototyping(プロトタイプを作成すること)」で、4つ目が「testing(テストを行うこと)」です。この4つを循環させることで、より良いデザインが生み出せる、とノーマン氏は著書に記しています。


もちろんこの考えは、ドアだけでなく世の中のあらゆるモノのデザインに当てはまるとのこと。


また、このプロセスは「モノのデザイン」だけでなく、開発途上国の公衆衛生を改善したり、農業に新しい観点をもたらしたりとさまざまな物事に応用可能です。


デザインにおける基本的な考え方として「人間中心設計」は位置づけられますが、それはでは人間中心設計に基づきデザインされたドアはどのようなものになるのでしょうか?


ノーマン氏は「理想的なドアのひとつは、ドアが開いたことや閉まったことにも気づかないようなもの」と、ドアの存在に気づくことがないレベルの洗練された自動ドアを理想型のひとつとして挙げています。


また、自動でなくともドアに取っ手がついておらず、ただの平面しかなかった場合は、ユーザーはこのドアを「押すことしかできない。したがって、(PUSHのような)表記もいらなくなる」として、押して開けるタイプのドアの理想型は「何も付いていないもの」とコメント。


確かに病院などで見かける取っ手のないドアは押すしかないので、「間違えて引いてしまった」ということも起こりえないわかりやすいデザイン。


そして「PUSH」や「押」といったような表記も必要なくなります。


対する引いて開けるタイプのドアの理想型は「一方向に垂直に伸びる取っ手のついたドア」とのこと。


自動車のドアを押す人がいないように、小さな取っ手は多くの人が「引くもの」と考えがちのようです。

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in 動画, Posted by logu_ii

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