月刊オダサガ増刊号

2024年創刊予定の「月刊オダサガ」の増刊号です。
「月刊オダサガ」編集長が好き勝手に書いているブログです。

フィクション「トチヂくんの椅子」 11

2014-02-01 19:06:52 | 小説「トチヂくんの椅子」
トチヂくんの椅子 11

 安波社長は、あまりにも情けない広報誌を見たおかげで、朝から気分が台無しになった。そこにはなにひとつ、真実など書かれていなかった。創作活動ならプライベートでやってもらいたい。

 広報誌にゲンナリした安波社長であったが、その日はさらに憂鬱な予定が待っていた。

 午後には、定例の取締役会がある。

 そこには当然のことながら、季瀬泉、殿川、宇津美、意地原、端本、古沢など、顔も見たくない胡散臭い狸連中が勢揃いする。

 今日、専務を決めることはしないが、それに関わる画策が飛び交うことになるのは火を見るよりも明らかだ。

 できれば欠席したいくらいの気分であったが、社長として出席しないわけにはいかない。いや、自分がいなければどんな出鱈目が議事録に残るか、分かったものではない。むしろ、暴走を食い止めるのが安波の役目でもあった。

 そう考えていたら、腹が痛くなってきた。以前より具合がいいとはいえ、持病は治っておらず、投薬によって体調を維持している。

安波社長は薬を飲んだ。大事には至らない程度の症状だ。

安波は今日もまた、本田元社長と松下元社長の写真に頭を下げた。彼らにすがりたい気分の安波現社長であった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿