初発売! 貴重な晩年のベートーヴェン!重厚さは随一。1986&'88ライヴ。山田一雄&日本フィルの芸術5

今回初登場となる両曲のうち「5番」は73歳時の演奏。ディスクとしては「英雄」同様、この後の2種の音源がこれまで発売されています(1989年新星日響、'90年札幌交響楽団)。演奏が熱くなりすぎるとフォルムの崩れが・・と感じる方もいるかも知れませんが、作曲家の目を通して再現された氏の演奏は決して構成上破綻をするわけではなく、ただ音楽の自然な流れが耳に残るのが不思議です。なぜ氏の演奏が時代遅れにならないのか。その理由は池田卓夫氏による解説書内で触れていますのでここでは割愛しますが、ただ言えるのは、まるで初めてこの曲を聴いたかのような感覚を喚起させる演奏はそう無いのではないでしょうか。その意味において、まさに「心に残る名演」です。
同様に「7番」も熱気溢れる演奏です(同じコンサートの1曲目は今回同時発売の「後宮からの逃走」序曲)。この溢れんばかりの充実した響きは、着実な録音の成果とも言えるべきもので、これまでいくつかの氏の盤にあったような音質上のもどかしさが排除されている点も見逃せません。池田卓夫氏による充実した書き下ろし解説も含め、日本フィルOBの新井豊治氏によるリハーサル時の微笑ましい回想録と共に、この盤も山田一雄のファンにとって永遠の価値を持つCDとなるでしょう。

タワーレコード （2013/07/05）