原発、災害想定に甘さ 政府事故調が中間報告
政府の東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎東京大学名誉教授)は26日、中間報告をまとめ、野田佳彦首相に提出した。福島第1原発事故が回避できたかどうかの判断は見送ったが、津波への備えや非常時の原子炉の冷却で東電に対応の甘さがあると指摘。今回の巨大津波のような、まれにしか起きない自然災害でも、「想定外」として無視せずに対処すべきだと提言した。
年明けから菅直人前首相らにヒアリングして政府の初動対応が適切かどうかなども調べ、来年夏の最終報告に盛り込む。中間報告を受け取った野田首相は最終報告に向けて「国民目線で調査をしてほしい」と述べた。
中立的な立場から原発事故を検証するために6月に発足した事故調は、これまでに計456人からヒアリングした。資料と合わせて約700ページの中間報告をまとめた。
東電や政府の責任は追及せず、事故の経緯や原因の分析にとどめた。炉心溶融(メルトダウン)や水素爆発を回避できたかどうかなど、事故が「人災」か「天災」かの言及はなかった。
福島第1原発は巨大津波で配電盤が浸水してすべての電源を失い、原子炉が冷却できなくなった。炉心溶融し、建屋が水素爆発した。中間報告では、事故原因について事前の津波対策が足りなかった経緯を詳細に分析した。東電は2008年に最大15.7メートルの津波が来る可能性を予測したが、根拠が不十分として対策せず、国も対応しなかった。津波による過酷事故を想定しなかったことも問題視した。
事故対応では、原子炉の冷却装置を巡る東電の判断ミスを指摘した。1号機の非常用復水器が動いていると誤認し、別の注水手段を準備するのが遅れた点を挙げ、「原子力事業者として極めて不適切」と批判した。3号機ではバッテリー切れを確かめずに高圧注水系を手動停止し、注水が中断。経緯を幹部に伝えず、冷却再開が遅れたとみている。
政府の被害拡大を防ぐ対策では、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射性物質の飛散予測を文部科学省や原子力安全・保安院などが公開しようと考えず、住民の避難に活用できなかった。情報公開では報道発表を控えたり、説明を曖昧にしたりする傾向がみられたという。
こうした点を踏まえ、当初、繰り返された「想定外」について、中間報告は「(原発の安全対策では)想定以外のことがあり得ることを認識すべきだ。今回の事故は想定外にどう対応すべきか重要な教訓を示している」と結論づけた。
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