Inside The 2014 Los Angeles Auto Show

クロスオーバーを投入へ

アウディAGは、クロスオーバー・タイプ(セダンとSUVを融合させたボディスタイル)の電気自動車を2017年に発売する。環境意識の高い富裕な消費者層に向けたモデルであり、テスラ・モーターズへの挑戦でもある。

この新型モデルは、アウディとしては初の本格的な量産電気自動車となり、環境志向の車を導入していくという同社方針の一端を担う。アウディはこの方針のもと、2014年から15年にかけての冬にはプラグイン・ハイブリッドのハッチバック「A3 e-tron」のデリバリーを開始する。

そして2015年には、「R8」(現行型は、市販価格が11万5900ドルするスポーツカー)の電気自動車バージョンを発表する予定だ。

アウディのルパート・スタドラー最高経営責任者(CEO)は、ベルリンで開かれた会合でブルームバーグに対し、「わが社のエンジニアたちは、(アメリカのゼロ・エミッション関連法規に適合する電気自動車に)取り組んでいる」と述べた。「おそらくクロスオーバー・タイプになるが、いまだ開発は進行中だ」

テスラは侮れない相手

アウディをはじめとするドイツの自動車メーカーにとって、電気自動車メーカーのテスラは、高級車市場における侮れない競争相手になってきた。大富豪の起業家イーロン・マスクが率いるテスラは、2015年にSUV(スポーツユーティリティ・ヴィークル)タイプである「モデルX」のデリバリー開始を予定している。米誌「コンシューマー・レポート」の今年の顧客満足度調査で、テスラは見事に最高得点を記録した。2位はポルシェ、3位はアウディ、4位はメルセデス・ベンツだ。

アウディは、今年の販売台数が史上初めて170万台を超える見込みであり、高級車ブランドとして世界第2位の規模を誇る。フォルクスワーゲンAG傘下の同社は、高級車ブランドトップであるBMWを2020年までに販売台数で上回ることを目指しており、アメリカ市場での販売拡大はその計画の一環だ。

燃料効率はいまや最先端技術の象徴になっており、「クリーンな走り」はアウディの戦略にとって重要だ。電気自動車に対する実際の需要はそれほどではないとしても、マス・マーケットで競うメーカーの車より高価であることの正当性を示すために、高級車ブランドにはそうした先進的なイメージが不可欠なのだ。

3万7900ユーロ(4万6700ドル)するA3 e-tronのデリバリーを開始した後、アウディは毎年1車種ずつ、新しいプラグイン・ハイブリッドを追加していくという。

ラインナップを拡大

さらにこの新しいクロスオーバーは、アウディにとってひとつの進路変更を意味する。バッテリーだけで走るシティカー「i3」を作り上げたBMWとは異なり、これまでアウディは、主に既存モデルの電気自動車バージョンの開発に注力してきた。コストの抑制を理由に、電気自動車専用車種の導入をためらっていたのだ。

ドイツのインゴルシュタットに本社と工場を置くアウディは、生産能力の拡大と新車種の開発のため、2018年までに220億ユーロ(272億ドル)を投資するという。また、同社は製品ラインナップを、現在の約50車種から60車種以上へ拡大することも計画している。

(原文著者:Christoph Rauwald(フランクフルト)、原文責任編集者:Chris Reiter、翻訳:水書健司/ガリレオ、写真:Bloomberg)
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