耳鳴りの治療に来る人は多いが、どういう音が聞こえているかで、治せるかどうか、だいたいの見当が付く。治せる耳鳴りの代表は、拍動性のものである。これは、心臓の鼓動、つまり脈動を耳の近くの血管を通して聴いているのである。


 どうして、そういうことが起きるかというと、これも異常に硬くなった筋肉の仕業で、耳の近くの動脈周辺の筋肉が硬くなることによって、その動脈の脈動が、振動として鼓膜に伝わってしまうのだ。


 音としては、太鼓のような音とか、ドンドンとドアを叩くような音とか、あるいは、洗濯機が回るような音(これは血流音を聴いている)とかであるが、心臓の鼓動に合わせたリズムで鳴る低音の耳鳴りであるのが特徴である。

 

 これは、第一、第二頸椎周辺の凝りを取ること、ことに、乳様突起(ツボでいうと完骨)の周辺に出来た頑固な凝りを取ることでほとんど消すことが出来る。


 最近、病院で半年治療をしたが治らなかったという人が治療に来ているが、六回目の治療の時に、ほぼ音は消えていた。ドーン・ドーンという音が、夜になるとどうしようもなく大きくなって眠れないので、眠剤を飲んで寝ているといっていたが、いまでは、ほとんど音は消えている。ただし、定期的な治療は必要だと思う。たぶん、月に二回程度。


 消しづらい耳鳴りは、蝉が鳴くような音、キーンというジェット機のような音である。ことに、中耳炎の後遺症の場合は、難しい。


 この場合でも、症状の改善は望める。それだけでもずいぶん楽になる。ただ、完全に消える例は非常に少ない。


 耳鳴りは、耳鼻科でステロイドの点滴をしても治りはしない。原因が、炎症にあるのではないからである。