テスラ、自動車メーカーからバッテリーメーカーへ

テスラが、家庭や電力会社向け大型蓄電池の販売に乗り出す。傘下のSolarCity社は太陽光マイクログリッドシステムの販売も開始しており、エネルギー事業への参入が本格化している。
テスラ、自動車メーカーからバッテリーメーカーへ
テスラは2014年、電池製造工場「ギガファクトリー」をネヴァダ州でパナソニックと共同で建設すると発表した。2020年に本格稼働をめざす。画像は別の英文記事より

電気自動車メーカーのテスラ・モーターズが、まもなく家庭や電力会社向けのメガバッテリー(大型蓄電池)の販売に乗り出す。報道によると、同社は4月21日付けの投資家向け書簡で、そうした計画の存在を認めたという。

同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、すでに2014年2月の投資家向け収支報告において、その可能性に言及していた。一般向けの公式発表は、4月30日に予定されているようだ。

電力会社はこうした大型蓄電池を、風力や太陽光といった供給が不安定な再生可能エネルギーを安定させるために利用している。その理由が法律による義務付けであれ、消費者の要求であれ、再生可能エネルギーの需要は高まっており、不安定さを補うための大型蓄電池の需要も伸びている。

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電池テクノロジー会社Cygnus Energy Storage社の創立者で、以前は米国のコンサルタント会社、Navigant Researchの業界アナリストだったサム・ジャッフェによれば、テスラの電力関連市場への参入は、特に驚くべきことではないという。すでに十指に余る数の企業が、蓄電池システムを電力会社に向けて供給しているが、テスラの参入により市場の重要性が裏打ちされたことは確かであり、同社の規模であれば業界の中心的存在になるだろうと、ジャッフェ氏は指摘する。

ジャッフェ氏は、「送電網のシステムは今後10年間で、よりクリーンで維持費が安いものになり、信頼性も高まる。それが可能になるのは、エネルギー貯蔵技術のおかげだ」と語る。

テスラは2014年に、「ギガファクトリー」と名付けた面積およそ93万平方メートル(東京ドーム約20個分)の電池製造工場の建設計画を発表した(冒頭画像)。これは、自動車や家庭電力用の電池ばかりでなく、例えばノートパソコンやスマートフォンなど、電子機器の電池の製造にも十分に対応できる規模だ(そうした小型電池をアップルに供給するとの噂もある)。

テスラは、パナソニックが製造したバッテリーセルを購入し、自社工場でそれを用途に応じた蓄電池パックやモジュールとして組み立てている。

ギガファクトリー建設の狙いのひとつは、バッテリーセルの仕入れの拡大によって電池のコストを引き下げ、電気自動車をガソリンエンジン車と価格面で競争できるようにすることだ。ジャッフェ氏によると、「パナソニック製のバッテリーセルの最大の顧客として、テスラはその仕入れに関して支配的な立場に立ち、製品を他社よりも安価に販売できるだろう」という。「今後成長が期待できる、電力会社を対象とした市場に参入することは合理的だ」

米国人の自動車を使う平均走行距離は減少傾向にあり、グーグルやウーバー(Uber)が構想しているような自律走行車のサーヴィスも、テスラにとって追い風にはなりそうもない。

世界的に自動車の台数が減っていくなかで、テスラに新たな事業部門が必要とされるのは確実であり、大型蓄電池や、他の自動車会社への供給の可能性も含めた電池ビジネスは妙案かもしれない。

なお、テスラ傘下のSolarCity社は2015年3月、分散型の太陽光発電設備と蓄電池、制御システムを組み合わせたマイクログリッドシステム「GridLogic」の販売を開始している

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TEXT BY KLINT FINLEY

IMAGE COURTESY OF TESLA

TRANSLATION BY KENJI MIZUGAKI, HIROKO GOHARA/GALILEO