Webデザイン受発注のセオリー

Webデザイン受発注のセオリーの表紙
Webデザイン受発注のセオリー」という本を献本していただきました。Webのビジュアルデザインを受注する側、発注する側がどういうコミュニケーションをとれば良いか、そこで何に注意すれば良いかがとても網羅的に(でも表面的にならずに)書かれていて、すばらしい1冊です。

ちなみにこの本で扱っている「Webデザイン」は広義の問題解決手法としてのデザインじゃなくて、あくまで視覚表現としてのビジュアルデザインです。あとプロセス管理の手法について書かれているので、デザインのTipsやツールの使い方的なことは一切出てきません。そういうのを期待して読むとガッカリします。(タイトルも「受発注のセオリー」ですからね。)

良いWebデザインは受発注のプロセスで決まる

この本の特徴は「Webデザインはプロセスの善し悪しが結果を左右する」という視点で書かれていることで、この点には個人的に多いに共感します。ご存知の通り、デザインはアートと違いクライアント(お客さま)があって始めて成り立つ訳で、だからこそクライアントが置かれている状況や課題、必要とするものが正しくデザイナーに伝わらなければいいアウトプットは得られません。

では満足のいくアウトプットのためにどういう情報を提供すべきか?

これは受注側だけが頑張ればすむ話じゃないと思っています。受注側は足りない情報があれば「下さい」と言わないといけませんが、そう言われた時に発注側がちゃんと回答できないと意味がありません。

それをふまえると、発注側では「どういうことを整理して、何を伝えないといけないのか?」ということまで説明されているのが、本書の秀逸なところだと感じています。(中身を全部書いちゃうとアレなので、詳しくは本読んでくださいw)

僕は以前は受注側にいて今は発注側でWebデザインに関わっている訳ですが、双方において「デザイン=アート」と勘違いされている側面があるのと、デザインコントロールの手法があまり一般的でない、という点を強く感じています。そういう状況を改善するコミュニケーションのフレームワークを本書は提供してくれます。

発注企業内のコミュニケーション改善にも言及

あと、発注側の中でも担当者はその上司(最終承認者)に承認をもらう必要がある訳ですが、この承認をスムーズに得られることがプロジェクト進行においてかなり重要です。世にはびこるちゃぶ台返しのほとんどは、この発注側の社内承認がうまく取れないことが原因だと考えるからです。(担当者も好きでちゃぶ台をひっくり返しているはずが無い訳で。)

仕事をする上での共通言語が増えることがアウトプットの品質向上につながると思うので、本書にあるようなコミュニケーションのフレームワークが一般化することを切に望みます。

Webデザイン受発注のセオリー デザインコントロールが身につく本
片山 良平
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ちなみに、この本は2010年1月にやった「デザイン依頼の方法論」という勉強会がベースになってできたそうです。この勉強会には僕も参加していてレポートも書いているのですが、「あの勉強会の話の背景にはこんな壮大な話があったのか」と出来上がった本を読んでびっくりしているところです。

著者の片山さんが知り合いだからというのをさっ引いても、Web制作者の必須書籍としたいぐらいおすすめです。

Webデザイン受発注のセオリー” への1件のフィードバック

  1. 感想有難うございます!
    最近自分も発注側と言うか、事業者側に回りましたが、事業者側で一番大切なのは目的をハッキリさせることだとおもいます。デザインのフィードバックの仕方とかも大事ではあるんですが、そこは本来受託側が汲み取るべき領域だし、本筋ではないかなと思います。
    デザインの話になるとどうしてもセンスと言った漠然とした言葉で思考停止してしまいがちなんですが、プロジェクトにおいてデザインという道具を使う場合は、センスよりロジックの方が重要なのではないかと思っています。

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