ジェンダーフリーとルソー思想(2) | 「ジェンダーフリー」ブッタギリ

ジェンダーフリーとルソー思想(2)

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ジェンダーフリーの根幹にあるのは平等論。その平等論がどこに起因し、どのような内容かを知る事は重要。渡部昇一氏(上智大学名誉教)は、ルソーがジェンダーフリーの根幹にあると指摘されていたが、渡部氏同様、中川八洋氏 (筑波大学教授 )もルソーに関して詳しい。
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筑波大学教授 中川八洋



戦後、日本のルソー教徒はの知識人の代表は、桑原武夫や丸山眞男らです。そしてルソーは家族否定、恋愛否定、貞操否定論で、次のように男女は相性など考えず、衝動や性欲望のままセックスをすべしと説く。

「男性と女性とは出会いがしらに機会のあり次第、欲望のおもむくままに、偶然に結合した・ ・ ・ 別れるのも容易だった。(ルソーの「人間不平等起原論」P.60)

「理想的人間である未開人は、女性であればだれでもよいのである。(未開人の各人は静かに自然の衝動を待ち、熱狂よりはむしろ快感を感じながら、選り好みをせずにそれを身にまかせる。そして、要求が満たされれば、欲望は完全に消え失せる)(同書P.77-78)

そうすると桑原武夫や丸山眞男らは、乱交主義者だということになります。

>ちなみにルソーは、人間の理想の人間の一つとしてオランウータンまで挙げている。(同書P.160-165)

ルソーは、野生の動物の自然状態とか、未開、野蛮人の自然状態というものを最高の理想の社会と定義した、人類史上唯一にして最初の哲学者です。

歴史の発展、文明の発展とともに、さまざまな富が蓄積され、富の不平等が起き、その過程において法秩序が生まれ、道徳規範が生まれ、様々な文明の儀式が生まれ、そしてお互い未知なる者同士が集合して「大きな社会」を運営していく文明というものをつくってきたのが人類です。

ところが、この文明の社会を、ルソーは逆に最悪の奴隷的社会であると定義します。

「社会と法律が弱い者には新たなくびきを、富める者には新たな力をあたえ、自然の自由を永久に破壊してしまい、私有と不平等の法律を永久に固定し、巧妙な簒奪をもって取り消すことのできない権利としてしまい、若干の野心家の利益のために、以後全人類を労働と隷属と貧困に屈伏させたのである」(同書P.106)

その最悪の社会であるがゆえに、これを破壊しなければならない。破壊することによって、野生の生き物と同じく、理想というべき未開的・野蛮的な自然に回帰する事ができる。

つまり「人間不平等起原論」は「平等教」のドグマの教典なのです。

未開野蛮では確かに私有の必要はなく無所有における平等が実現するからです。そこに「平等教」は、私有のない最貧困の平等を求めるドグマとなる必然があります。

かくしてルソーは、「果実は番人のものであり、土地は誰のものでもない」(同書P.85)という私有が禁止された共産社会を主張するに至るのです。

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関西大学名誉教授 谷沢永一氏との共著
「名著の解読学」P.144-146より抜粋
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