TOP > コンテンツ一覧 >

新製品レビュー

18
新製品レビュー
公開日:2015/03/11

ソニーα7II+オールドレンズ Vol.3 ミラーレンズ・実写編

photo & text 大浦タケシ

ソニーα7II + HANIMEX 300mmF5.6

第3回目となるα7IIのレビュー。まだやっているのかと思う読者もいるかもしれないが、レンズグルメの愛読サイトとしてしつこくトライアルしたいと考えている。

さて、今回はミラーレンズで撮影を行った。ミラーレンズとは、別名レフレックスレンズ、反射レンズなどと呼ばれる望遠レンズ。一般的な屈折光学系のレンズとは異なり、ミラーの反射作用を応用し光を収束する。鏡筒内部には2枚のミラーがあり、レンズ内に入った光はまず中央に穴の開いた1枚目のミラー(凹面鏡)で反射され、次に前玉の内側に貼られた2枚目のミラー(凸面鏡)で更に反射。1枚目のミラー中央の穴の中にある屈折系のレンズを通り撮像素子、またはフィルムに結像する。

ミラーレンズのメリットは、屈折光学系の望遠レンズにくらべ全長が短くできるうえに、色収差の発生がほとんどなく、さらにコストが抑えられることがある。反面、絞り機構を効果的な位置に置くことが難しく、独特のクセのあるボケ味や内面反射によるフレアが発生しやすいのがデメリットだ。

特にフレアはクセもので、筆者が知るかぎりほとんどのミラーレンズで多かれ少なかれ発生する。ミラーレンズで撮影したことのある写真愛好家なら分かるかと思うが、コントラストが低くキレが悪いのはそのためだ。しかし、デジタルでは撮影した画像の調整が容易にできるため、恐れることはない。実際、今回の撮影はRAWフォーマットを使用し、現像ソフト(Image Data Converter Ver.4)とフォトショップを使い調整を行っている。

また、いうまでもなく焦点距離の長いミラーレンズは手ブレが発生しやすい。今回はいずれの場合も堅牢な三脚を使用しているが、カメラの向きが変えやすいように雲台のロックを緩めて撮影を行っているため、ブレの発生は避けられない。α7IIの手ブレ補正機構が効果的に効くように、必ずカメラボディ側で正確に焦点距離を設定するようにしておきたい。

ミラーレンズはMFフィルムカメラ時代に大いに人気を博した。特に北米を中心に様々なブランドのミラーレンズが発売された。今回、α7IIのために用意したミラーレンズもMF全盛である70年代後半から80年代に製造されたものだ。いくつかは日本では馴染みの無いブランドである。今回の撮影では、これらミラーレンズの大変興味深い結果が得られた。


Minolta RF ROKKOR-X250mmF5.6

Minolta RF ROKKOR-X250mmF5.6 

250mmとミラーレンズとしては短い焦点距離を持つ。大きさも中望遠レンズほどでハンドリングもたいへんよい。肝心の写りもたいへんよく、コントラストが高くヌケのよい描写が得られる。さらにシャープネスも上々。掲載した作例もわずかな調整のみとしている。使いやすい焦点距離やミラーレンズとしては文句の付けどころのない写りなどから中古市場でも人気は高いが、元々タマ数が少なく店頭に並ぶことは少ない。見つけたら即買したいレンズである。


F5.6 1/2500 ISO200


 F5.6 1/4000 ISO200


OHNAR 300mmF5.6

OHNAR 300mmF5.6

OHNARの詳細は不明だが、おそらくは北米のブランドのようである。製造は本レンズの場合、日本だ。独特のシェイプを持つ鏡筒だが、実は絞り羽根を内蔵する変わり種で、最小絞り値はF16。開放F5.6ではシャッタースピードが厳しい時などたいへん重宝する。ただし、絞り込んでも被写界深度や描写に影響することがない。逆光ではフレアが発生しやすいものの、順光ではまあまあのコントラストとシャープネス。ただし、絞り込むと強い周辺減光が発生する。なお、扉写真のHANIMEX 300mmF5.6はブランド違いの同じレンズである。


F5.6 1/2500 ISO200 +0.7EV


F8 1/1250 ISO200 +1EV



CELESTRON 300mmF5.6

CELESTRON 300mmF5.6 

天体望遠鏡で有名なCELESTRONブランドのミラーレンズ。鏡筒に大きく描かれたブランド名が見る者の目を引く。これもOHNAR 300mmF5.6同様、逆光に少々弱いところがあるが、順光ではそこそこの描写が得られる。ただし、それでも画像の調整はマストだ。また、ケラレはないものの周辺減光は強く、トリミングは左右上下均等に行う必要がある。Tマウントを採用するため、どのマウントのカメラにも装着は可能となっている。このレンズも日本製。


F5.6 1/800 ISO200 +0.3EV


F5.6 1/2000 ISO200 +0.3EV



SPIRATONE 500mmF8

SPIRATONE 500mmF8

SPIRATONEは北米のブランド。現在は不明だが、かつては積極的に交換レンズを展開していたようで、海外のオークションサイトなどで見かけることが多い。同ブランドの500mmF8とするミラーレンズはいくつか存在するが、本レンズはそのなかでも鏡筒が細長く、三脚座を備えるタイプ。発売された年代は不明だ。描写特性については他のミラーレンズ同様で、コントラストが低めでシャープネスも今イチ。フォトショップなどで調整する必要がある。日本製。



F8 1/500 ISO200


F8 1/800 ISO200 +1EV


ZYKKOR 500mmF8

ZYKKOR 500mmF8

こちらも北米のブランドのようである。ミラーレンズといえばこの焦点距離、この開放F値が最も一般的だろう。描写特性はミラーレンズとして考えれば問題ないもの。もちろん現代の尺度からすると些か物足りないものではあるが。ヘリコイドの回転角は大きく、ピント合わせもたいへんしやすい。このレンズはMakinonをはじめ異なるブランドからもいくつか出ている。もちろん日本製である。



F8 1/500 ISO200


Viviter Series 1 SOLID CATADIOPTRIC LENS 800mmF11

Viviter Series 1 SOLID CATADIOPTRIC LENS 800mmF11

Vivitarは比較的よく知られた北米のカメラブランド。レンズも数多くリリースしているが、「Series 1」シリーズはそのなかでも上位モデルという位置付けである。本レンズは同じく北米Perkin-Elmer社が製造し、Vivitarブランドで販売したミラーレンズだ。通常ミラーレンズは鏡筒のなかは空洞となっているが、本レンズはガラスブロックで充填され、光学的に短い鏡筒を実現している。さらに、見た目以上に重いのも特徴だ。描写はミラーレンズとしてフレアは少なく、キレもまあまあ。被写界深度の浅さにピント合わせは戸惑うことも少なくないが、ミラーレンズとしては良好な描写といえるだろう。兄弟レンズとして、Vivitar Series 1 SOLID CATADIOPTRIC LENS 600mmF8がある。



F11 1/1250 ISO400


F11 1/500 ISO200


F11 1/1250 ISO400  -0.3EV


まとめ・・・
正直にいえばミラーレンズで撮影することは、ばかばかしく思える苦行である。マニュアルフォーカスであるうえに、被写界深度が極端に浅いためピント合わせはシビア。特に航空機や鉄道あるいはスポーツなどより動きのあるものは難しい。それはピント合わせのためのスルー画拡大が素早いα7IIを持ってしてもである。さらに本文で幾度となく触れているようにフォトショップでのレタッチを前提に考えなければならないのも厄介なところ。ミラーレンズは何かと制限が多く、手間ばかりかかるレンズなのである。
だが、一度その虜になれば、撮ることがこの上なく楽しく感じるレンズであるのも事実。あくまでもミラーレンズとしてであるが、稀にドンズバのピントだと、その描写に惚れ惚れするようなことがあるし、何よりミラーレンズで撮ったという偏った達成感(笑)は、高性能AFレンズに慣れた身にとって新鮮だ。
時おり中古のミラーレンズがカメラショップの店頭に並ぶことがある。ニコンなど一部のメーカーを除けば,比較的手頃な価格で手に入れることができるので、この扱いづらいレンズに興味ある人はぜひα7 IIと組み合わせて楽しんでみてほしい。



BACK NUMBER