独連銀、ザラツィン理事解任へ 人種差別発言で
ドイツ連邦銀行(中銀)は2日、移民などへの差別的な発言を繰り返したザラツィン理事を解任する方針を固めた。任命権を持つ連邦大統領に対し、「解任を提案した」との声明を発表した。理事が「イスラム系住民のせいでドイツの知的水準が低下した」などの趣旨に言及したことで、中銀の信認が揺らぎかねないと判断した。
独連銀は高い独立性があるため、理事を解任できるのは健康上の理由や、「重大な過失」で職務が遂行できなくなった場合に限られている。本来は刑法違反などを想定しているが、独連銀の理事会は「人種差別発言も重大な過失」との見解で合意したようだ。
ザラツィン氏は社会民主党(SPD)の論客でベルリン州政府の要職などを歴任したものの、あからさまな人種差別には政府・与党内でも批判が強い。このため独連銀の異例の決断を評価する。
だが非キリスト教徒や非欧米系住民への差別や偏見が根強く残るドイツ社会ではザラツィン氏を支持する声も多い。
戦後、安価な労働力を確保する狙いで外国人労働者を積極的に受け入れたが、異文化との共存を許容する雰囲気が醸成されず、独社会は閉鎖的なままとの指摘もある。(フランクフルト=赤川省吾)