2010年09月19日
ブータンの電力自給率・・・400%?!
こんにちは。
更新が遅くなり申し訳ございません。
今月は電力の自給率について。
色々調べていたら、興味深い一言を発見。
「ブータンの電力自給率400%!」
え〜?!信じられないですね。
日本の電力自給率が20%であることを考えると、どれだけすごい数字か・・・。
どうして400%なのでしょう?
ブータンは、石油は100%海外から輸入しているのですが、電力はなんと自給率400%とのこと。
しかもその電力の99%がなんと水力発電なのです。
まさに持続可能な電力。
ブータンは急峻な国土でヒマラヤの雪解け水に恵まているからこそ可能になった数字で、エネルギーについては実に条件に恵まれているのです。
現在、ブータン全体で1600MWの発電能力があるそうですが、国内ではその約1/4しか使用しないので、残り約75%はインドに輸出しているのです。
だから、電力の自給率は400%で、しかもこの電力の輸出に伴う収入が、ブータンのGDPの40%に達し、もちろんブータン最大の「産業」となっているのです。クリーンな産業で外貨を稼げるのも、羨ましい限りですね。
もちろんこれだけの電力を輸出できるのは、まだブータン国内では電力消費量が少ないという事情もあります。
総発電量1600MWの25%を人口800万人で使うとして計算すれば、一人あたりの発電量は 0.5kW(=500W)になります。
そしてまた、2020年には発電能力を倍近い3000MWまで増強するそうです。
水力のポテンシャルとしては、30000MWぐらいあるのだとか。
3000MWになったときに今までと同じ1200MWだけをインドに輸出したとすれば、国内で1800MW使えるわけですから、一人あたりにすれば2.25KWで現状の4.5倍使えることになります。
恐らくこのぐらいあれば、先進国なみに電力を使えるのではないでしょうか。
もちろんそれ以外にも車の燃料などに石油が必要になるわけですが、これだって電気自動車を使うなどすれば、輸入する必要はなくなるかもしれません。
エネルギーの自給自足も夢ではなさそうです。
とは言うものの、現状では電気を使うことができるのは、まだ都市部を中心とした一部地域の住民のみ。
政府は2020年までにこれを100%にする計画だそうですが、幸いこの計画は順調に進んでおり、計画を3年間前倒しして、2017年にはすべての村に電気が通りそうとのことです。
大規模な水力発電は自然や生物多様性を破壊するという意見もあります。
そうでなくとも、ブータンの場合には小規模な村が国中に分散しているので、大規模な発電所を設置し、送電線網で長距離にわたって送電するというやり方は、経済効率的にも良くなさそうです。
そこで注目されているのが、マイクロ水力発電です。
各村に、その村全体を賄える程度のマイクロ水力発電所を設置するのであれば、送電線網は不要で、発電所も安価で簡単に出来、自然破壊も大幅に減らせるといいことづくめです。
現在ブータンでは、JICAが無償資金協力として整備を進めているそうです。
それより規模が大きい場合でも、ブータンには日本のような大型の多目的ダムはないそうです。
ダムを作るために村が水底に沈むということはないのです。
すべての発電所は「流れ込み式」と呼ばれるタイプのもので、上流には小さな堰を作るだけで、そこで取水した水をトンネルを通じて発電所へと流しています。
流れ込み式は多目的ダム式に比べる建設費も安く、寿命も長いそうなので、ブータンはとても合理的な選択をしていることになります。
日本とブータンでは人口密度や産業構造があまりに違いますので、単純な比較や議論はできません。が、皆さんご存じのように日本もかつては水力発電が主要だったのに、電力消費が増えるに従い、それだけでは賄えなくなり、火力や原子力への依存度が急速に高まってしまいました。
しかし、火力や原子力が持続不可能であることは明らかです。
大規模な水量発電はこれ以上増やせないにしても、日本でも流れ込み式の水力発電を増やしたり、マイクロ水力など分散型の発電方法をもう少し試してみてもいいのではないかと思います。
そして何より、ブータンなみにとは言いませんが、一人あたりの電力消費量を大幅に削減する努力は必要でしょう。
(china)
●参考●
・JICA
http://www.jica.go.jp/project/bhutan/0700531/news/general/20100317.html
更新が遅くなり申し訳ございません。
今月は電力の自給率について。
色々調べていたら、興味深い一言を発見。
「ブータンの電力自給率400%!」
え〜?!信じられないですね。
日本の電力自給率が20%であることを考えると、どれだけすごい数字か・・・。
どうして400%なのでしょう?
ブータンは、石油は100%海外から輸入しているのですが、電力はなんと自給率400%とのこと。
しかもその電力の99%がなんと水力発電なのです。
まさに持続可能な電力。
ブータンは急峻な国土でヒマラヤの雪解け水に恵まているからこそ可能になった数字で、エネルギーについては実に条件に恵まれているのです。
現在、ブータン全体で1600MWの発電能力があるそうですが、国内ではその約1/4しか使用しないので、残り約75%はインドに輸出しているのです。
だから、電力の自給率は400%で、しかもこの電力の輸出に伴う収入が、ブータンのGDPの40%に達し、もちろんブータン最大の「産業」となっているのです。クリーンな産業で外貨を稼げるのも、羨ましい限りですね。
もちろんこれだけの電力を輸出できるのは、まだブータン国内では電力消費量が少ないという事情もあります。
総発電量1600MWの25%を人口800万人で使うとして計算すれば、一人あたりの発電量は 0.5kW(=500W)になります。
そしてまた、2020年には発電能力を倍近い3000MWまで増強するそうです。
水力のポテンシャルとしては、30000MWぐらいあるのだとか。
3000MWになったときに今までと同じ1200MWだけをインドに輸出したとすれば、国内で1800MW使えるわけですから、一人あたりにすれば2.25KWで現状の4.5倍使えることになります。
恐らくこのぐらいあれば、先進国なみに電力を使えるのではないでしょうか。
もちろんそれ以外にも車の燃料などに石油が必要になるわけですが、これだって電気自動車を使うなどすれば、輸入する必要はなくなるかもしれません。
エネルギーの自給自足も夢ではなさそうです。
とは言うものの、現状では電気を使うことができるのは、まだ都市部を中心とした一部地域の住民のみ。
政府は2020年までにこれを100%にする計画だそうですが、幸いこの計画は順調に進んでおり、計画を3年間前倒しして、2017年にはすべての村に電気が通りそうとのことです。
大規模な水力発電は自然や生物多様性を破壊するという意見もあります。
そうでなくとも、ブータンの場合には小規模な村が国中に分散しているので、大規模な発電所を設置し、送電線網で長距離にわたって送電するというやり方は、経済効率的にも良くなさそうです。
そこで注目されているのが、マイクロ水力発電です。
各村に、その村全体を賄える程度のマイクロ水力発電所を設置するのであれば、送電線網は不要で、発電所も安価で簡単に出来、自然破壊も大幅に減らせるといいことづくめです。
現在ブータンでは、JICAが無償資金協力として整備を進めているそうです。
それより規模が大きい場合でも、ブータンには日本のような大型の多目的ダムはないそうです。
ダムを作るために村が水底に沈むということはないのです。
すべての発電所は「流れ込み式」と呼ばれるタイプのもので、上流には小さな堰を作るだけで、そこで取水した水をトンネルを通じて発電所へと流しています。
流れ込み式は多目的ダム式に比べる建設費も安く、寿命も長いそうなので、ブータンはとても合理的な選択をしていることになります。
日本とブータンでは人口密度や産業構造があまりに違いますので、単純な比較や議論はできません。が、皆さんご存じのように日本もかつては水力発電が主要だったのに、電力消費が増えるに従い、それだけでは賄えなくなり、火力や原子力への依存度が急速に高まってしまいました。
しかし、火力や原子力が持続不可能であることは明らかです。
大規模な水量発電はこれ以上増やせないにしても、日本でも流れ込み式の水力発電を増やしたり、マイクロ水力など分散型の発電方法をもう少し試してみてもいいのではないかと思います。
そして何より、ブータンなみにとは言いませんが、一人あたりの電力消費量を大幅に削減する努力は必要でしょう。
(china)
●参考●
・JICA
http://www.jica.go.jp/project/bhutan/0700531/news/general/20100317.html
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この記事へのコメント
1. Posted by ナンシー 2010年09月22日 19:28
ブータンはテレビの普及率はどうなんですか?恐らくあまりテレビが普及してないと思われます。
テレビばかり見てるのもかなりの電力消費するのではないでしょうか?
テレビばかり見てるのもかなりの電力消費するのではないでしょうか?
2. Posted by Jiro 2011年05月02日 13:49
この記事を読んでください.
http://www.internationalrivers.org/files/IR_Himalayas_rev.pdf
http://www.bhutan2008.bt/en/node/464
日本が協力している小水力発電は,ブータン全体の発電量の数百分の1しかありません.
あとはブータンでも大規模なダムです.1980年代から既に本流をせき止めて川を殺しています.僕は,これらを「持続可能な電力」と言うことには抵抗があります.日本となんらかわりません.
インドへの売電で国が成り立っているので,それには大規模な発電をするしかない,というのがブータンとインドの合意.この動きはどうにも止まりません.
最後に書かれているように,まずは先進国やBRICsのような地域で,電気の使用量を削減する努力が必要なんでしょうね.
http://www.internationalrivers.org/files/IR_Himalayas_rev.pdf
http://www.bhutan2008.bt/en/node/464
日本が協力している小水力発電は,ブータン全体の発電量の数百分の1しかありません.
あとはブータンでも大規模なダムです.1980年代から既に本流をせき止めて川を殺しています.僕は,これらを「持続可能な電力」と言うことには抵抗があります.日本となんらかわりません.
インドへの売電で国が成り立っているので,それには大規模な発電をするしかない,というのがブータンとインドの合意.この動きはどうにも止まりません.
最後に書かれているように,まずは先進国やBRICsのような地域で,電気の使用量を削減する努力が必要なんでしょうね.