UPDATE1: 金融政策に実体経済を押し上げる力ない、増税停止条項に数値盛らず=藤井民主税調会長

 [東京 14日 ロイター] 民主党の藤井裕久税制調査会長は14日、都内で講演し、金融政策の役割について、金融緩和に円安効果があるのは事実としながらも、金融政策で実体経済を押し上げることはできないと述べた。また、デフレとは物価がスパイラル的に下落することであり、今はデフレではないとの認識を示し、デフレ下での消費税引き上げに反対する党内議論をけん制した。
 きょうから始まる消費増税法案の事前審査に関しては、法案は12月29日に党内議論の結果決定した社会保障・税一体改革素案通りに出てくると確信しているとし、経済状況に応じて消費税引き上げの実施を停止する「弾力条項」には具体的な数値目標は入らないとの認識を示した。
 <今はデフレではない、円高は実力不相応>
 足元の経済運営では、党内に広がるリフレ論をけん制した。藤井税調会長はプラザ合意後のバブル生成と崩壊は「緩和政策をいつやめるかを間違ったためにバブルが起こり、その是正に時間がかかったためだ」とし、バブルの生成と崩壊からの教訓は「金融政策は大事だが、誤る余地が大きい」点だと語った。さらに、デフレとは物価がスパイラル的に下落する現象で、現状は「デフレとは思わない」と強調した。
 その上で「金融政策の役割は大事だが、実体経済を押し上げる力はない」とも語り、経済成長率を高めるために過度に金融政策に依存する考えをけん制。「まして日銀法改正は許せない」と警告した。
 また、一時1ドル70円台を付けた歴史的な円高水準について「今の円高は実力不相応だ。シェルター通貨であって、日本の円の力はこんなにあるはずがない。必ず落ちるすう勢(円安)がある」と述べ、ファンダメンタルズから離れた円高との認識を示した。一方で、基軸通貨米ドルも続落の歴史だとし、「下落傾向にあることは否定できない」と指摘。早期に安定した状況を作ることが世界の通貨当局者の責任だと語った。
 円を安定させるには「財政を安定させることが大事だ」とも語り、検討中の社会保障・税一体改革の実現が急務との認識を強調した。
 <消費税上げ、低成長・マイナス成長の方がやりやすい>
 消費税引き上げ時の経済情勢に関連しては、英国ではマイナス4%成長下で付加価値税引き上げが実施されたことなどの事例を挙げ、「物価上昇時が一番入れてはいけない時だ。バブルに拍車をかける。逆に、むしろ低成長やマイナス成長の方が(消費税引き上げは)やりいい」と述べ、インフレ時には避けるべきとの認識を強調した。
 消費増税法案の争点のひとつの「景気弾力条項」では、「昨年12月29日にまとめたもので出てくると確信している。数字は入っていない。入れろという議論には、決めたとおりだと政調会長が説明するはずだ」と述べ、経済状況に応じて実施を停止する弾力条項については大綱の「総合判断」を踏襲する考えを強調した。
 2015年度に10%まで引き上げた後の増税の必要性に関しては、2020年度の財政健全化目標との関連で試算はあるが、「試算であって、政治課題になっているわけではない」と反論。今年度中の法案提出について「(実現しなければ)変な方向に流れる可能性がある」と懸念を示し、「何とか実らせたい」と決意を語った。
 民主党はきょうから全国会議員が参加できる会議を開催し、閣法の国会提出の前提となる法案の事前審査を開始する。党内の手続きを踏まえて、政府・民主党執行部は23日までの閣議決定を目指すが、調整は難航が予想されている。増税慎重派は弾力条項の具体化を求めているほか、2015年度に10%まで引き上げた後の「次の改革」をめぐる付帯条項が争点となっている。
  (ロイターニュース 吉川 裕子)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab