台湾新時代-蔡英文の挑戦・上

目指すのは理念の近い日米との連携強化だが 民主主義の力が通用しない「巨大な中国」とどう向き合うか

 「目の中に涙が残っているなら、さあ拭いて。台湾新時代の始まりを迎えよう」

 次期総統に当選した民進党の蔡英文主席は16日夜、台北市内の選挙本部前で、集まった支持者を前に勝利を宣言した。12年1月の総統選の敗北宣言で「泣いてもいい。でも、落ち込まないで」と呼びかけた蔡氏は、言葉通り雪辱を果たした。「今日からが改革の新たな1マイルだ。2300万人とともに前に向かって走り、国家の困難を打ち破ろう」。

 前回選の敗北後、蔡氏は再起に向けて直ちに動き出した。8月には愛称の「小英」を冠したシンクタンク「小英教育基金会」を設立。研究者や行政経験者を集めて経済・福祉政策の準備を始めた。地方の農家や零細企業に足を運び、有権者との距離を縮めた。

 中国との関係を強化すれば台湾経済は「馬上好(すぐに良くなる)」と宣伝して就任した馬英九総統が、2期にわたる対中優先政策でも公約を達成できず、社会の不公平感や閉塞(へいそく)感が強まる中、蔡氏は「新経済発展モデル」や低所得者向け住宅政策などを打ち出していった。党財政は少額募金で改善し、陳水扁政権(2000~08年)末期の金銭腐敗の印象を払拭した。

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