オリンパス株上昇 再生へ残されたカギ デジカメと医療事業の行方

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縮小

デジカメは縮小か

今後の課題は、コンパクト市場の縮小傾向が加速しているデジタルカメラ事業だ。オリンパスは昨年11月に当初計画の黒字化予想から3年連続となる80億円の赤字に下方修正した。さらに、1月下旬に決算発表をしたキヤノン、富士フイルムが相次いでコンパクトデジカメ販売台数を下方修正しており、外部環境が一段と悪化していることは間違いない。

株価上昇の背景には、聖域化されていたデジカメ事業に対して、新経営陣が思い切ってメスを入れてくれるとの思惑もある。

オリンパスは早ければ2月12日の決算発表時にデジカメ事業の新たな構造改革策を公表する予定だ。しかし、社外取締役の一部からは事業縮小など大規模な再構築を求める声が上がる一方、笹宏行社長らは光学機器の会社として映像事業の意義を唱える姿勢を見せている。協業するソニーとの提携効果もいまだ見えておらず、具体案の調整にはなお時間がかかる可能性もある。

デジカメ関連事業のある社員は「品質管理など直接収益を生まない部署は異動などで人が減らされている。構造改革と称して組織変更も多いがビジョンが明確ではなく、モチベーションが下がっている社員も少なくない」と不安を漏らす。

盤石とみられた医療事業も先行きには懸念がある。医療現場ではネットワーク技術やソフトウエアを重視する傾向にあり、こうした技術を持たないオリンパスには新たな対応が求められ、開発費が膨らみかねない。

また粉飾決算に関連して、国内外で計22件、総額275億円の訴訟案件を抱えており、裁判はこれから本格化していく。西村あさひ法律事務所の森本大介弁護士は「一般的に損害金額の立証は難しいが、虚偽記載を認めている点では損害賠償が認められる可能性は高い」と指摘する。

本格的な復活にはまだ予断を許さない状況だ。

(本誌:島 大輔 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年2月9日号)

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