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東芝メモリ売却、最高益記録の中、株主からは見直し待望論も浮上

  • 4-9月はメモリー好調で営業最高益を記録、債務超過解消も確実視
  • IPOが有利、価格引き上げへ日米韓連合と再交渉を-増資の株主
Signage for Toshiba Corp. is seen at the company's headquarters in Tokyo, Japan.

Signage for Toshiba Corp. is seen at the company's headquarters in Tokyo, Japan.

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

半導体子会社「東芝メモリ」の売却手続き中の東芝が14日、2017年10-12月期の連結決算を発表する。メモリー事業がけん引し上期(同年4-9月)の営業利益は過去最高を記録した。債務超過回避のため急いで売却を決めた虎の子を巡り、一部の株主からは売却見直しへの待望論も浮上している。

  上場廃止基準である2年連続の債務超過を是が非でも避けたかった東芝は、紆余曲折を経て昨年9月に東芝メモリを米ベインキャピタルが主導する日米韓連合に2兆円で売却することを決めた。売却履行の大前提は3月31日までの関係国による独占禁止法審査完了だが、中国当局の審査はまだ終了していない。

  関係者によると、半導体産業の成長を国策に掲げる中国当局は、東芝メモリの売却先にライバルの韓国SKハイニックスが参画していることを不安視している。一方、台湾の鴻海精密工業はベイン連合を上回る2兆5000億円以上を提示していた。障害が生じる可能性もある中、売却を急ぐ必要はないとの声もあがる。

  マッコーリー証券のアナリスト、ダミアン・トン氏は、中国の独禁法審査について「期限に間に合う可能性はかなり低い」と予想。エース経済研究所の安田秀樹シニアアナリストも「もはや契約が既に締結されたという以外に売却する理由がない。メモリー事業を東芝本体に残すというのがベストシナリオだ」と指摘した。

第三者割当増資

  東芝メモリの売却見直し論が浮上している大きな理由は、財務状態の回復にある。同社は昨年12月に6000億円の第三者割当増資を実施。1月には巨額損失の原因となった米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の債権と株式売却でさらに約4100億円の改善効果を得られるとし、18年3月末の債務超過回避を確実にした。

  こうした中、3月31日が近づいてきたこともあり、第三者増資で新たに東芝株主になった投資家などからは、東芝に売却を急がず戦略見直しを迫る声も浮上し始めた。新規株式公開(IPO)の方が有利だとの見方や、ベイン連合に売却するなら再交渉して価格を引き上げるべきだなどの意見だ。

  東芝広報担当の原みどり氏は東芝メモリの売却について、3月31日に間に合わせるよう取り組んでいると述べた。ベインはコメントを控えた。東芝はベイン連合への売却後も東芝メモリ株の4割程度を実質的に継続保有する計画だ。

株主総会

  12月の増資で東芝株主になったある投資家は匿名を条件に取材に応じ、東芝は再交渉により2000億円を上乗せすることができると話した。投資家らはより好条件を引き出すため、6月下旬に開催される株主総会を利用する計画もあるという。

  増資には旧村上ファンド出身者設立のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントサーベラスなど経営を厳しく監視し、改善を求める物言う株主が名を連ねる。仮に3月末を過ぎても東芝が中国当局に期待して待つようなら、総会に向け「売却に反対するグループが動きを強めるだろう」とマッコーリーのトン氏は指摘する。

  ただ、ある関係者は、東芝の主要取引行である三井住友フィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループが売却の見送りなどは許さないとみている。主要行は東芝側に6000億円の融資を約束する条件として、中国の承認を得て売却が実現することを求めている。

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