昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

小説<手術室から>(41)村上先生(1)

2015-10-07 02:16:42 | 小説・手術室から
 翌日、秀三は術後の診察のため外来へ行った。
 彼のように手術を終えたばかりの人が何人かいた。
「よく見えるわ。青く見えるのね」などと話し合っている。
 そうしているうちにも外来の患者がどんどんやって来る。
 
 また今日も村上先生は大量の患者をがんがん捌いて、そして疲労困憊するのだ。
「先生は引き受けすぎるんだよ・・・」
 いささかうんざりして、顔見知りの看護師に声をかけた。
「そうなのね。村上先生を頼られる患者さんが多いから・・・」

 診察前の検眼で0.1まで見えるようになったことが確認できた。
 中待合で順番を待ち、呼び込まれて村上先生の前に座った。
 
「そうね。手術はうまくいったわ。0.1まで見えるようになったんだ・・・」
 先生は検査データを見ながら感慨深げな声を出した。
「でも、司さんの目には原因不明の問題があるのよね・・・」
 先生は、どうする?という顔で秀三を見た。
 しかし今さら原因を究明して、リスクを負ってまでさらによりよい結果を求める気にはならない。

「いや、とりあえずこれで十分です。ありがとうございました」
 秀三はケリをつけるように言った。
「斜視は気にならないわね・・・」
 先生は初めて県眼鏡を通すことなく彼の目を真っすぐ見てほほ笑んだ。

 ─続く─

 <好奇心コーナー>

 フォルクスワーゲンが排ガス不正処理で大変なことになっている。
 

 フェルディナンド・ピエヒ元会長の結果主義的独善体質に起因しているという説がある。
 
 彼はポルシェ家とホルクスワーゲン社を二分するピエヒ家の当主なのだ。
 
 トヨタを凌駕する世界戦略のため部下を叱咤激励した結果だというのだ。

  




最新の画像もっと見る

コメントを投稿