「特集」東日本大震災1年~復興への課題

医師去り入院病棟閉鎖

 東京電力福島第1原発の事故で、福島県の医療基盤が揺らいでいる。病院勤務の医師は震災前の2013人から昨年12月時点で71人、看護職員も170人減った。「もともと医師不足だが、原発被害が輪を掛けた」と県医師会。相次いで医師が去り、入院患者を受けられない病院も。常勤医師が確保できず、人手不足が解消できていない。
 「救急病院の体をなしていない」。福島県の沿岸部にある病院の事務担当者が話した。この病院は常勤医が震災前の10人から3人に、看護職員は83人から約20人減った。手が回らないため入院病棟は閉じられ、夜間の患者も受け入れできない。「放射能の問題で、子どもがいると戻りづらいのでは」。医師、看護職員の復帰は期待薄で、担当者は頭を抱える。
 大学病院の応援医師に支えられ、診療を続けている。「多くを占める高齢患者は、医師が頻繁に代わると不安を感じる」と心配し、長期勤務が可能な常勤医を探すが、見つかっていない。
 震災前、収入の約8割は入院業務だった。外来患者の診療のみで経営は苦しく、患者数も減っている。「病院の厳しい現状が伝わると、患者が不安になる。病院名は伏せて」
 南相馬市の小野田病院も医師確保に苦労する。震災前は8人。今は1人減だが、当直が月4回程度から6回と医師の負担が増えた。インターネットの求人サイトや県の紹介などで常勤医を募るが、反応があるのは1カ月までの短期のみ。事務長は「最低でも半年交代でないと困る」と嘆く。病床数は震災前の4割に縮小。看護職員が減り、人手が足りないこともあり、入院を制限せざるを得ない。

※記事などの内容は2012年3月5日配信時のものです

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ