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被曝、心配しすぎに注意 不要な検査や服薬で副作用も

2011年3月19日12時45分

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 福島第一原発の事故の影響で、被曝(ひばく)による健康への影響を心配した人たちが、必要のない検査を求めて専門施設に駆け込んだり、正しい知識のないまま安定ヨウ素剤を服用したりと、混乱が広がっている。専門家は「ヨウ素剤は飲み方によって、効果がないばかりか、副作用もあり危険」と冷静な対応を求めている。

 「ここで被曝検査してもらえるって、聞いたんですけど?」

 18日午後、高度な被曝医療を行う放射線医学総合研究所(千葉市)の裏門。福島県のいわきナンバーの乗用車から、若い女性が降り、警備員に叫んだ。車内には、家族連れらしき3人が乗り、後部座席には、荷物がぎっしり。その後、車は警備員に案内され、正面玄関に回った。直後にも、いわきナンバーの車が1台到着し、検査について警備員に尋ねていた。

 放医研には被曝量を調べる検査などへの問い合わせが殺到している。19日までに1千件以上の電話があり、6回線がふさがる状態に。関東地方に住む人からの問い合わせもあるという。

 放医研は、原則的に一般向けの検査はしておらず、原発近くにいた人で、一度も検査を受けていない人に限って、例外的に検査をしている。

 放医研の明石真言・緊急被ばく医療研究センター長は「原発の半径30キロ圏内の住民でも、除染が必要なレベルの放射線が検出されたのは、原発のそばを歩いていた人など、ごく例外的な場合だけ。圏外の住民は現状では検査は必要ない」と訴えている。

 日本医学放射線学会も18日、現状で健康への影響が心配されるのは、「原発の復旧作業のために尽力している方々だけ」として、冷静な対応を求める声明を出した。

 また、安定ヨウ素剤の服用を巡っても、混乱が起きている。この薬は、放射線を浴びる約2〜3時間前に、決められた量を飲むと、最も効果がある。

 しかし、厚生労働省などによると、原発の周辺では、自治体が住民にヨウ素剤を配り、住民が飲んでしまった例が複数あるという。放水作業に従事した警視庁機動隊員の中には、規定量の3倍を飲んだ隊員もいたという。

 これに対し、日本核医学会は18日、「今の段階で安定ヨウ素剤による甲状腺保護処置は不要。むしろ危険もあるので避けて」と注意喚起した。規定量以上のヨウ素剤を飲むと甲状腺の機能が不安定になり、「リバウンドで一定期間後に、放射性ヨウ素の吸収を高めることさえ起こりかねない」という。

 厚生労働省も同日、ヨウ素剤は医師らの立ち会いで飲むように、福島県や県内の自治体に注意喚起した。(宮島祐美、大岩ゆり)

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