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「格差は民主主義の脅威」 ピケティ教授、東大生に語る

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 『21世紀の資本』の著者であるパリ経済学校のトマ・ピケティ教授が1月31日、東大で講義し、「不平等、格差の拡大は民主主義を脅威にさらす」と格差問題に警鐘を鳴らした。講義の詳細および東大生との質疑応答は以下の通り。

非常に多くの本を読む日本の方の前で講義ができて光栄だ。まず述べたいのは、私が書いた『21世紀の資本』は多くの研究者の協力で成り立っている。アトキンソンやサエズらと共に各国のデータをまとめた。日本のデータ分析には一橋大の森口千晶教授に協力してもらった。

経済学は社会科学の一つだ。我々の研究をもとに皆さんが違う結論を将来導くことになるのはいっこうにかまわない。『21世紀の資本』はあくまで歴史的な証拠をまとめたものだ。

グローバル化では格差は説明できない

さて、格差の実際を見てみよう。米国で所得のトップ10%の人々が、その国の所得のどれくらいを得ているかをみてみると、1910~20年代は45~50%だったが、1950年には35%になった。その後、低い時代が続いたが、1980年から上昇し、2000~2010年代には45~50%に再び高まった。

経済学者のクズネッツは20世紀半ばのデータを見て、経済が発展すれば格差は縮まると考えた。だが、我々がさらに長期間のデータを集めて調べると、それは単に大恐慌と2度の世界大戦の結果だった。足元で格差は再び拡大している。楽観できる状況ではない。

なぜ格差が広がったのか。よくグローバル化が指摘される。中国など新興国の台頭で、先進国で働く中間技能者の賃金が下押しされるとの分析だ。だが、国によって格差の動きは違う。米国は非常に大きく、欧州はそこまでではない。日本は米欧の中間に位置する。グローバル化では説明できない。

米国の格差が大きい一つの理由は教育だろう。学費が高く、中低所得層は良い大学には行けない。ハーバード大の学生の親の平均年収は米国の所得階層のトップ2%だ。建前では米国社会は流動性が高いといわれるが、実際はそうではない。

一流企業のトップマネジャーの問題もあろう。マネジャー層が高い報酬をもらえるよう企業統治をゆがめてしまった上、レーガン大統領以降、所得税の最高税率も引き下げられた。

資産の不平等が広げる格差

だが、それ以上に資産の格差が見逃せない。資産保有者トップ10%が国の資産をどれだけ持っているかを計算すると、現在でも欧米では60~70%に達する。1世紀前に比べれば小さいが、それでも不平等は大きい。20世紀は世界大戦や累進課税の影響で資産の不平等は大きな問題には見えなかった。だが、足元で所得の格差は拡大している。

私は今後、相続資産がものをいう不平等な社会が復活していくと思う。特に欧州や日本で人口が減り成長が鈍化している。低成長下では、今まで蓄積した富がものをいう社会になるのだ。

フォーブス誌による億万長者のランキングがある。信用できないデータとの指摘もあるが、富の分布について非常に有用な情報を示してくれる。この分析によると、トップ層のお金持ちの資産成長率は物価調整後で6.8%に達する。世界全体での1人当たり平均資産増加率は2.1%で、所得増加率が同1.4%だ。一部の人々の資産が普通の人の4倍前後のスピードで伸びるのは果たして許されるだろうか。

累進資本課税という解決法

私は格差を是正するために、保有する資産に応じた税金を課すべきだと提言している。高額の純資産(たとえば100万ユーロ以上)を持つ人に、累進的に資産に対し年1~2%の税金を各国共通でかけるべきではないか。このやり方なら富の集中を回避できる。

税金の歴史は驚きだらけだ。米国や英国はもともと、70~90%という突出して高い最高税率を持つ累進課税をしてきた。だが、レーガンやサッチャーが活躍した1980年代に、最高税率を一気に下げた。日本ももともと、最高税率は70%以上あったが、今は米英と似た税率に下がっている。

格差を縮めるにはインフレも効果がある。公的債務を減らす作用も大きい。ただ、私は累進課税が最も文明的な格差是正の手法だと考える。

【質疑応答】

Q:本の中で格差拡大の要因に「r(資本収益率)>g(経済成長率」があると主張する。なぜr>gになるのか理由はあるのか。

A:r>gになるのに理由はない。社会的なファンデーション(基盤)なのだと思う。資本収益率と経済成長率は異なったメカニズムで決まる。人類の歴史上、農耕時代から産業革命まで経済成長率はほぼゼロだった。だが、このときでも資本収益率は存在した。農地の収益率は4~5%だったと推計できる。産業革命後、経済成長率は高まったが、資本収益率も6~7%と上がった。これから日本や欧州は人口が減り成長率も鈍る。富の集中は不可避だ。だからこそ多くの富を持つ人に税をかけるべきだ。

Q:格差拡大の背景には新自由主義の台頭が大きいのではないか。

A:指摘の通りだ。レーガンやサッチャー、新自由主義の台頭は格差拡大に寄与した。大事なことは格差や不平等があると政治に悪い影響を及ぼすことだ。米連邦最高裁判所は、企業や個人による政治献金の規模に上限を設ける必要はないと判断した。これは大きな問題だ。億万長者が何十万ドルも政治キャンペーンにお金を出すことになる。民主主義はもろい。格差や不平等は民主主義にとって深刻な脅威だ。

Q:私は工学部の2年生だ。お金持ちでないと良い大学に入れない問題を指摘していたが、幸運にも大学に入れた学生は何をすべきか。

A:まあ親は選べませんから(笑い)、仮にお金持ちの親に生まれたといって恥じることはない。大事なことは世界に貢献するということだ。民主主義は我々に対して積極的な市民であることを求める。我々は制度を良い方向に変える責任がある。もともとの出自、親が金持ちかどうかに関係ない世の中へ変えなければならない。私はこの本を通じて、経済学を民主主義に貢献する学問にしたいと思っている。

Q:累進資本課税より相続税を課す方が人々に受け入れられるのではないか。

A:確かにそうだ。だが、相続税に比べ資産税は非常に多くの資産に薄く広く課すことができる。私は相続税、所得税、資産税3つがバランスよく課されるのが大事だと考える。

Q:日本では2000年代、格差に関して非常に多くの議論がなされた。ただ、実証に基づくものではない感情的な議論も多かった。格差の議論は今後どのように進めるべきか。

A:有用な議論を進めるために経済学者は実証的な研究をすべきだ。今の経済学者は多くのエネルギーを数学的なモデルの作成に使っているが、それは他の分野の研究者に比べて自分は科学的だと見せつけるだけの行為にすぎない。複雑なモデルなど不要だ。

私がこの研究で使ったモデルは非常に単純だ。逆に多くの時間を実際のデータの収集に充てた。そして、わかりやすい形で中立的に世の中に示した。私がいまこうやって説明しているのは、自分の研究を社会に役立ててほしいと思っているからだ。

(経済部 松尾洋平)

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