世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●世界の百姓一揆 ”サンダース現象”は米国だけのテーマにあらず

2016年05月12日 | 日記
津波、噴火……日本列島 地震の2000年史
クリエーター情報なし
朝日新聞出版


応援に感謝、励みになります!
にほんブログ村 政治ブログへ

●世界の百姓一揆 ”サンダース現象”は米国だけのテーマにあらず

米大統領選における民主党候補、バーニー・サンダースの勢いが止まらない。トランプ現象の方に、世間の目は釘づけだが、筆者は、アメリカの病巣の根源に迫っているのは、バーニー・サンダースの主張だと理解している。以下は、中々撤退宣言しないバーニーに苛立つ、米国のエスタブリッシュメントの心境を表した記事である。しかし、この故宇沢弘文氏の主張(スティングリッツ氏が顧問なのだから当然か)をなぞるような、バーニーの大健闘は、世界のグローバル金融経済に、強い衝撃を与えている。延いては、この流れは、世界のヘゲモニーの大きな潮目を演出すると考える。(注:百姓一揆は歴史的名称と捉える。)

今回の米大統領選における、エスタブリッシュメントへの、抗議のパワーの本質は、実はトランプ現象ではなく、サンダース現象の方だと云うことだ。日欧米のメディアは、かなり過激で喜劇的「劇場型」トランプに、意識下か、 無意識下は判らないが、テレビ的価値を見出している。しかし、トランプ候補の主張は、一世一代のパフォーマンスで、持続可能性と云う面から、米国や世界の支配層から見て、実は、それ程怖いものではない。完璧に怖がっているのは、サンダース氏が、「民主社会主義」と旗幟を鮮明にしている点だ。これは、政治的ポジションの話ではない。謂わば、「価値観」のパラダイムシフトを強く主張していることである。

≪ サンダース氏、粘り腰=トランプ氏利する?-米大統領選
【ワシントン時事】米大統領選の民主党指名争いで、土俵際に追い詰められた民主社会主義者のバーニー・サンダース上院議員(74)が粘り腰を見せている。 10日のウェストバージニア州予備選でもヒラリー・クリントン前国務長官(68)に快勝。党内から撤退圧力が強まる中、6月14日の最終戦まで戦い抜く構えを崩していない。
 「これで19州で勝ったことになる。私たちは民主党の指名を勝ち取る」。サンダース氏は10日、次の予備選の舞台となるオレゴン州で演説し、逆転を誓った。サンダース氏は「苦しい戦いには慣れている」と強調した。
  サンダース氏の指名獲得は「ほぼ不可能」(ワシントン・ポスト紙)との見方が大勢だ。NBCテレビによると、9日までの獲得代議員数はクリントン氏 2225人、サンダース氏1459人。クリントン氏が過半数(2383人)を上回るには残る代議員の15%を獲得すればいい計算だ。
 こうした情勢を反映してか、サンダース氏の強みだった支持者からのカンパも先細りになりつつあり、4月に集めた選挙資金の総額は3月の4600万ドルから2600万ドルに激減。サンダース氏は550人いたスタッフのうち225人を解雇せざるを得なくなっている。
 それでも戦い続けているのは、わずかな逆転の可能性に望みをかけているからだけではない。多くの代議員を獲得すれば、それだけ発言力が増し、夏の全国党大会で採択される党の綱領に、公立大学の無償化など自身が掲げる政策を反映しやすくなるとの読みがあるようだ。
 もっとも、選挙戦が長引けば、熱狂的なサンダース氏支持者の間でクリントン氏への反感が増幅し、共和党の実業家ドナルド・トランプ氏(69)を利する可能性も否定できない。10日の出口調査では、サンダース氏支持者の4割超がクリントン氏よりトランプ氏を支持すると回答。民主党内では懸念が広がっている。  ≫(時事通信)


この時事通信の心配は、アメリカの特権階級の心配を代弁している。筆者は、以前から、サンダースとトランプの、米エスタブリッシュへの抗議は、同じ問題を底流に持っていると述べている。クリントンの勝ちだと、既得権内では思いたわけだが、本選の結果は、世界を震撼させるかもしれないのだ。一般のテレビニュース族達には、到底理解できない話なのだが、世界の潮流は、確実に変わった。日本の政府広報テレビと化したNHKや民放各局のニュース報道を視聴していたら、愚衆化するのは当然なのだ。日テレであろうがテレ朝であろうが、対米追随路線まっしぐらで、且つ貧乏人を特権階級と勘違いさせる誘導報道がなされている。

世界の変化は、萌芽の域を超えて、成長過程に入っている。無論、ナショナリズム的方向の吹き上がりも激化している。しかし、こちらの方には、論理的裏づけが乏しく、常に、社会下層に存在する人々の感情を動員する運動なので、カリスマ指導者が常に必要になり、持続性維持に難点がある。また、日々のゴシップや反国民的政策のひとつひとつに、強く反応するのも、一種ガス抜きを自己完結してしまい、消費文化の罠に嵌っている。もっともっと、本質に迫る、心からの鬼気が欲しいところだ。

そんなことを思っていたら、歴史学者のブログに出会った。保立道久と云う東大名誉教授のコラムなのだが、その通りなのである。アメリカと付き合ってきた日本人は、世界の普通が、よく判っていない。異様なアメリカ、欧米を教師のように見立てて、世界や人間の普遍性を価値判断することの愚かさに気づくべきである。安倍晋三も異常だが、これが普通だと思っている日本人自体も、実は異常なのだ。憎まれ口のように聞こえるだろうが、「奴隷が、自らを特権階級だと思いこむ」このことが、最も日本にとって怖いことである。


 ≪ バーニー・サンダースは極端な政治家ではない。
バーニー・サンダースは極端な政治家ではない。トランプはたしかに極端で変わった人間だが、サンダースは常識人だ。日本のメディアは例によってまっとうな報道をしない。彼らは政治家というと困ったチャンと思うのだ。日本の一部政治家を政治家の典型と思っているから、想像力が働かないのだろう。
 サンダースはヨーロッパでいえば普通の政治家である。なにしろアメリカというのは一面で、国民皆保険を「社会主義だ」という少しお馬鹿の大国だから、その標準から政治家を評価していてはまったくの誤りになる。
 サンダースの演説を読んでいると、アメリカ社会の格差拡大、インフラストラクチャの劣化、不当な選挙資金調達システム、不正な八百長経済などな ど、これは進歩も保守もない問題だ。l民ゾ祈雨(注:文字化けで意味不明原文通り)の社会のこれを見過ごすのは不道徳だ、アメリカの現在の状態は異常だという主張は実にストレートで説得的だ。
 サンダースの「進歩も保守もない。右翼も左翼もない」という主張は、私には共感できる。歴史家は保守の立場をベースとして進歩の方向を見定めるのが役割であり、日本のように民族の基本を外国に押さえられている国では、右翼も左翼もないというのは常識的な話しだ。こういう日本のような国では極右・極左をやっているのはよっぽどの世間知らずか、お坊ちゃんだ。
 サンダースは、1970年代からヴァーモントで社会活動と政治活動をはじめ、1981年には、39歳で、ヴァーモントでもっとも大きく影響力のあるバーリングトンの市長となった。おもな支持者はヴァーモント大学などの教授連、社会福祉関係者と警官の組合で、民主党にも共和党の候補をやぶって市長としてあわせて4回8年のの任期をまっとうした。その段階から「社会主義者」を自称し、アメリカの南アメリカ政策に対して正面から批判的な立場をとり、シティーホールでノーム・チョムスキーを呼んで講演を組織するなど、その立場は一貫していたが、有能な市長として評価は高かった。
 1987年にはU.S,Newsがサンダースをバーリングトンをもっとも住みやすい町にしたアメリカ最良の市長であるとしたという。ヴァーモントでは非常に強い支持をうけている。
 しかし、1989年の市長選には立候補せず、その年はハーバートで教えている。サンダースは政治学専攻の研究者としての側面ももち、妻のオメラも後にバーリングトンカレッジの学長となっている。
 しかし、サンダースは1990年ヴァーモントの下院議員に民主党にも共和党にも属さないインディペンデントの立場で当選し、そののち16年間、一回を除いて圧倒的な勝利で下院議員を勤め続けた。これは独立無所属の下院議員としては40年ぶりのことであったという。その立場を20年近く維持していることになる。そして2006年に、その立場のまま上院議員に立候補し、圧倒的な勝利をおさめた。民主党に属さず、しかし、民主党のリベラルグループと会派を作り、その委員長として、イラク戦争に反対し、市民権利制限法に反対し、リベラル勢力の中枢にいたということである。
 以上は、『SENATOR BERNIE SANDERS』(Robert Shelley)によったが、これでサンダースの演説を読んでみると、ようするにサンダースは地域の社会活動のなかから徐々に全国政治に入り込んでいった 普通の政治家であることがわかる。魅力的な人らしい。  
 もちろん、相当にしっかりした人物で、筋金入りであることも明らかで、サンダースは1960年代のアメリカ学生運動の中心であったSNCC(学生非暴力委員会。Student Nonviolent Coordinating Committee)の活動家である。彼らは、アメリカの国人差別に抗議する公民権運動をにない、そしてベトナム戦争反対の運動を担った。
 サンダースはマーチン・ルーサー・キングの指導した、1963年のワシントン大行進に参加しており、だから、彼はキング牧師の「I have a dream」という有名な演説をその場できいている。私より5歳ほど上だが、ようするにまったくの同世代である。イギリスのコービンも同じ。
 ヨーロッパ、アメリカで明瞭に対抗的な政治家が影響を広げている。私より年が少し上だが感じがよくわかる。同世代と思う。他国の政治家を同世代と感じるというのは初めてのこと。歴史が一巡り巡ったということか。

 ■以下、【B・サンダース】2月9日のツイートである
サンダースはニューハンプシャーで大差で勝てば勝利の可能性があるといっている。

「バーニーサンダースのニューハンプシャーの人びとへのメッセージ  私たちが訴えているのは、腐った選挙費用のシステム、不正な経済システム、そして壊れてしまった犯罪の捜査と審判のシステムなどの全てに片をつけることだ。もし、明日のハンプシャーで大きな前進があれば、私は勝てるだろうと思う。ぜひ、みんなで出てきて投票しよう。Thanks.」

日本にとって重要なのはTPPである。現在の段階で、サンダースが「TPPを葬る to kill the TPP」と宣言していることの意味は重大である。

【サンダース】2月3日(水)、サンダースは大統領になったら、TPPを葬ると宣言した。

「TPPを発効させないだけでなく、企業が国民の仕事口を海外に アウトソースしやすくする通商協定はすべて議会に送らない。貿易はよいことだが、フェアなものでなければならない。TPPはその反対だ」

「私たちは、他の国々に学ばなければならないところにいる。「大学に行きたいか。それならにいくべきだ。家族の収入とは関係ないだろう」。多くの国々では、大人たちは、そういうことを若者にいうのが普通なのだ。」

「私たちは、この国におけるグロテスクな所得格差に取り組むと同時に、あまりに多くの人びとが人種差別に苦しんでいる現実を重視しなくてはならない。」

「2014 年に、医薬品メーカーは、ロビー活動や政治キャンペーンへの寄付で $ 2 億 5000 万を使った。これはワシントン・DC にとっても、さすがにでかい金だ。」

「ヴェリーリッチと普通の人びとのあいだでどんどん広がっている格差を縮めるのは、すでに一種の道徳的な責任の問題になっている。」

「国というものの真の偉大さは、億万長者や百万長者の数には関係ない。 不要な薬を処方せず、費用を抑えようという動きに対して、制約(筆者注:製薬)業界はロビー活動をしながら、広告キャンペーンを打っている。」

「2016年は、貧困のなかにアメリカを停滞させるのではなく、そこから抜け出るための仕事をする年だ。我々は十分に生活できるレベルの最低賃金を獲得しなければならない。」
(注:原文略)

 毎日新聞のアメリカ大統領選挙の今日のツイートには「クリントン氏は、候補指名を争うサンダース上院議員が大手金融機関と関係する資金を受け取っていたと 指摘。資金提供があっても、自分たちは考えを変えてないと強調しました。金融業界(ウォール街)との関係を指摘されてきたことへの反撃です」とある。しかし、これにはサンダースのHPに反論がある。$200,000をWall Streetから受けたというが、Democratic Senatorial Campaign Committee からのもので、これは個人や組合の少額献金の集合だ。虚偽宣伝だと反批判している。  ≫(BLOGOS:保立道久東大名誉教授)

*ちなみに、保立道久氏のBLOGOSの記事一覧のURLは下記。すべてに目は通していないが、歴史家から見た、世界観や、社会観は参考になりそうだ。
http://blogos.com/blogger/michihisa_hotate/article/


歴史のなかの大地動乱――奈良・平安の地震と天皇 (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


応援に感謝、励みになります!
にほんブログ村 政治ブログへ


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ●「パナマ文書」 開き直る金... | トップ | ●米民主党はクリントンを切れ... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (武尊)
2016-05-13 04:41:23
私もサンダース氏の行動に賛成します。ところが国内ではミズホたんとかタロチャンとか云ってる人が反対だったりするんですよね。意味わかんねェ(笑)
何でもTV広告を未だに続けてるのはおかしいとかね。確か一人当たり$75でしたっけ?こんな個人献金を秘匿しちゃう方がダメでしょ、とは書いておきました。
そういえば今後政策をヒラリー達に呑ませるのにも必要だったでしたね。忘れてた、、。
まァ、米国が変われば日本も変わる(特に財務・外務に激震が走るでしょう。)
さて、問題は後継者が居るんでしょうか?まさか次期大統領選挙には出られませんよね?問題はそこかなァ、、?
Unknown (山椒)
2016-05-16 03:26:32
バーニー・サンダースの言葉の重みは、彼の一貫した行動、政策方針とモラルから成り立っています。

バーニー・サンダース
正義とは
https://www.youtube.com/watch?v=CZFjR1CerVk

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

日記」カテゴリの最新記事