基本情報
内容詳細
◆20世紀初頭からの100年間で、人間の知能を示す数値=いわゆる「IQ」の平均値は大幅に上昇している。これは世界的に見られる現象であり、どの検査方法でもIQの平均値は10年に3〜5ポイント上がっているという。1984年にフリン教授によって指摘されたことから、この現象は「フリン効果」と呼ばれ、近年日本でも心理学や教育学の文化で注目されている。
◆本書は、フリン効果の提唱者であるフリン教授本人が、このIQ上昇は何を意味するのか、私たちの知性や心理、社会とどう関係するのかについて解説する本である。従来、フリン効果は年代がさがるにつれIQテストに慣れていくことで生じるとされていたが、最近では「現代的な生活によって人間の抽象的思考能力(特にパターン認識能力)が上がっているから」という学説が提唱されている。本書でも、どの検査のどの項目のスコアが上がっているのかを元に、人間の知能のうち具体的にどの部分が、なぜ向上したのかを考察していく。
◆さらに、IQと社会の関係についても、人種やジェンダーと知能の関係、死刑におけるIQの影響、老化によって衰えやすい(あるいは年を重ねて成熟していく)知的能力はなにかなど、刺激的なトピックを立てて語っていく。
1)「黄色人種、白人、黒人の順でIQが高い」「大学においては、男子学生の方が女子学生よりIQが高い」という統計結果は、従来その政治性のために無視されるか、一部の人種差別主義者が「白人(男性)の方が知性を司る優秀な遺伝子を持っている」と唱える根拠とされていた。このような誤解に対し、視覚文化の発展や、男女の(社会的圧力によって取りがちな)行動の違いから、IQ差の原因を解説する。
2)アメリカでは、責任能力の有無を決めるためにIQスコアが使われているが、この数値は時代によって意味の変わるもので、適切な補正がされなければならない。現実には、IQスコアの間違った適用により、死刑になるべきでない人が死刑になっている。
3)IQを測定すると、老化によって分析能力は失われるが、語彙など言語能力は失われにくい。また、IQの高い人ほど、老化によって失われる能力が大きい。若いころIQが低かった人は、それほど劇的に能力が落ちることはない。
◆「IQ」「頭の良さ」という多くの人が興味を持つトピックを、豊富なデータと、現代社会に寄り添った解説で学べる本である。著者は「フリン効果」の名付け親でもあり、知能を研究する心理学者の第一人者と言える存在であることから、この分野の書籍の決定版となる。斉藤環さんの解説で、より日本の状況に惹きつけた理解が可能になる。
【著者】
James R.Flynn(ジェームズ・R・フリン)
ニュージーランドの心理学者であり、フリン効果の発見者。オタゴ大学名誉教授。
【解説】
斉藤環
1961年生まれ、精神科医、批評家。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。思春期・青年期の精神病理学、病跡学を専門とする。主著に『戦闘美少女の精神分析』『社会的ひきこもり』『ヤンキーと精神分析』他多数。日本病跡学会賞、角川財団学芸賞受賞。
【目次/構成】
■目次
1章『最初に』Opening windows
2章『IQと知性』IQ and intelligence
3章『発展途上国では』Developing nations
4章『死と記憶と政治の関係』Death,memory,and politics
5章『若者と老人』 Youth and age
6章『人種と性別』Race and gender
7章『社会学的想像力』The sociological imagination
8章『進化と難問』 Progress and puzzles
【著者紹介】
ジェームズ・R.フリン : オタゴ大学名誉教授。専門は道徳哲学、心理学。20世紀を通じ、世代を重ねるにつれて人々の知能指数(IQ)が上昇を続けているという“フリン効果”の発見者として知られる
水田賢政 : 翻訳者
斎藤環 : 精神科医、批評家。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。思春期・青年期の精神病理学、病跡学を専門とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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