心理学 総合案内 こころの散歩道 (心理学講座/災害心理学東日本大震災の災害心理学/高齢者ケア新潟青陵大学碓井真史

高齢者の心のケア、体のケア

社会的弱者、災害弱者としての高齢者を守るために

2011.3.15


災害弱者としての高齢者

 若者のような、社会的強者は、自力で、力強くすばやく行動できます。早く避難所に入り、良い場所を取り、そして早い時期に避難所を出て、新生活をスタートさせることもできるでしょう。
強者は、冷たく硬いおにぎりでも平気です。赤ん坊や高齢者に比べれば、簡単に脱水症状をおこしません。ペラペラと文句が言える人もいるでしょう。
でも、お年寄りは、じっと我慢をしているかもしれません。
避難所に来るのが遅れ、寒い場所で何も言えず、震えているかもしれません。
本当は大人用のオムツが必要なのに、誰にも言えない人もいるかもしれません。
避難が遅れ、居心地の悪いところしか空いていないかもしれません。
避難所がリーダーの下で正しく運営されているならば、高齢者、障害者、 ・ 子ども、妊婦、赤ん坊など、災害弱者の人々をいたわり、良い場所を提供することもできるでしょう。
すべての場所がそうであれば良いのですが。
さらに、社会的弱者は、避難所から出ることも遅くなるかもしれません。
人よりも居心地の悪い場所で、人よりも長期にわたって暮らさなければならないときもあるでしょう。
ご家族、同じ避難所の方々、そして災害ボランティアのみなさんの力で支えていければと思います。
より良い避難所生活のために
 災害ボランティアの心理学:互いに成長するために

トイレ・風呂

年齢が上がれば、だれしもが、排尿排便の問題を抱えています。自宅なら融通がきくし、失敗しても大丈夫ですが、みんながいて、プライバシーも不十分な避難所ではどうでしょうか。
仮設トイレも、きたないとか、プライバシーという問題ではなく、あの段差がとても辛いかもしれません。手すりがなければ不安かもしれません。和式ではバランスが取れず、危険かもしれません。
トイレに行かないように水を飲まない人もいます。
仮設のお風呂も一人で入れるでしょうか。毎週デイサービスに通って、お風呂に入れてもらっている人もいるかもしれえません。でも、避難所ではどうなるでしょう。不安がいっぱいかもしれません。

避難所のトイレ・仮設トイレ:問題と工夫


思い出

地震とそして津波で、思い出の品を全て失った人もいるでしょう。おにぎりや毛布は自衛隊が持ってこられても、思い出の品はそうはいきません。
若い人たちは、まだこれから、いくらでも思い出を作ることができます。これから、アルバムのページを増やすこともできます。でも、高齢者には時間が足らないかもしれません。
家を失っことも、田畑を失ったことも、何十年と共に暮らした家や土地を失った喪失感は、若者の感覚とは違うでしょう。


健康管

避難所になっている体育館などは、どんなに関係者が努力しても、健康面を考えれば、やはり快適とはいえません。不十分な暖房、換気。布団を敷き詰め、大勢の人が一緒に寝泊りしています。
阪神大震災では、健康を害し、持病を悪化させ亡くなる高齢者もたくさん見られました。避難所から病院へ運ばれ死亡された高齢者の死因の半数は、肺炎でした。
せっかく大地震と大津波に生き残ったのに、これ以上の犠牲者を増やしてはいけません。高齢者の健康管理は、とても大きな課題です。
水分補給、体の清潔、適度な運動、感染症の予防。強い人ならさほど気にしなくても良いことが、高齢者の場合は、誰かが意識してケアする必要があります。
心理的な落ち込みも気をつけなければなりません。デイサービスでは、楽しい雰囲気の中で、レクレーション(リハビリ)をしたり、食事をしたり、入浴したりしています。

お話しを聞こう

苦しんでいるお年よりの話を聴きましょう。避難所で、仮設住宅で、あなたの身近で。苦しい思い、辛い思いを、お聞きしましょう。
話をしてもらうだけで、心はずいぶん軽くなるものです。
若いころの昔話も良いかもしれません。
一緒に話すことで、孤独感も和らぎます。心のケアになり、体の健康にもつながります。
話を聴くことは、私たちの想像以上の力があるのです。
良い避難所なら、お年寄りにとって、とても楽しい場所になるかもしれません。
カウンセリングマインド:話を聞いて心をケアするために
PTSD 心的外傷後ストレス障害(心の傷のケア)

人間関係の喪失と創造の繰り返し

突然の災害。命からがら避難し、避難所に入ります。ここで、ご近所の人間関係を失うこともあるでしょう。
避難所での新しい人間関係を作らなければなりません。
苦労の末、新しい人間関係ができはじめたころ、それをまた失います。新しくできた友人が、一人去り、二人去り、避難所を出て行きます。
そしていつか、自分も避難所を去ります。
ここで、自宅に戻れ、ご近所の人もみんな戻り、元どおりの生活ができればよいのですが、大災害が発生していれば、そうはいきません。今回の東北関東大震災では、町の復興はいつになるのか、わかりません。
自宅に戻れなければ、避難所から、仮設住宅へ。
避難所での人間関係を失い、今度は仮設住宅地での、また新たな人間関係作りを始めなければなりません。
高齢者にとって、人間関係の変化は、大きなストレスになります。
仮設住宅での新しい人間関係作りに失敗してしまえば、阪神大震災のときに何例も見られた「仮設住宅での高齢者の孤独死」といったとても悲しい結末すら考えられます。
仮設住宅を出た後、さらに各々の事情により、もとの家に戻れない人も多数いることでしょう。
高齢者のストレスは続きます。
寂しい思いで、今いる場所を出て、心細い思いで、新しい場所に入る。そんなことがないように、ケアをしていければと思います。

高齢者の良いところ

(暗い話が続いたので、明るい話も)
昔は、高齢期は健康を失い、お金を失い、仕事を失っていく、喪失の時代と言われていました。でも今は違います。元気な高齢者はたくさんいます。若者以上に夢と希望を持っている高齢者もたくさんいます。
収入は減りますが、支出も減ります。自由な時間は増えます。新しいことを始める高齢者もたくさんいます。各地の市民大学講座など、高齢者ばかりです。今や高齢期は想像の時代です。
高齢者はたしかに素早く動くことはできません。しかし、ある家では、大地震が来てみんなが慌てふためいた時、おじいちゃんが叫びました「みんな!おちつけぇ~!」。この一言で家族みんなが落ち着いて、避難できたそうです。
あまりの恐怖で動くことができなかったとき、「足が悪いおばあちゃんを助けなきゃ」と、そう思った時、勇気がわいてきたという人もいます。
被災地では、想像を絶する苦しみと困難があるのでしょう。でも、こんな時だからこそ、弱者への支援が生まれるのではないでしょうか。 Tweet



 


 

リンク
災害後に避難所で生活される高齢者とご家族の方へ:避難所での健康と生活

BOOKS

高齢者・障害者の災害時の避難支援のポイント

ウェブマスターの本『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』

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