全治2カ月の大けがを負った歌舞伎俳優市川海老蔵(33)が無期限謹慎中に「生まれ変わる」ため山ごもりを計画していることが8日、分かった。02年に紀伊半島の大峰山にある行場で修行を経験しているが、今回は、暴行事件に巻き込まれる結果を招いた行動を反省し、新しく生まれ変わるための人間修行となる。この日、海老蔵は都内で松竹などを訪れおわび行脚したが、仕事復帰した妻小林麻央(28)も自宅前で「心からおわび申し上げます」と深々と一礼して謝罪した。

 海老蔵がおわび行脚した。この日午前中、黒っぽいスーツ姿の海老蔵は1人で東京・築地の松竹本社を訪れ、7日の会見にも同席した迫本淳一社長、安孫子正専務ら松竹幹部と面会し、あらためて謝罪した。その後、後援会関係者などを回り、おわびを重ねた。

 また、海老蔵が出演したテレビCMの放送見送りを決めた「ヤマキ」「ピップ」「伊藤園」3社の広報室などに電話をかけ「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と謝罪したという。昼すぎに2週間ぶりに自宅に帰ったが、報道陣の呼び掛けには無言だった。今日9日にも警視庁の再聴取に応じるという。

 会見で無期限謹慎が明らかになった。来年1月「初春花形歌舞伎」座頭公演など来年の予定をすべて白紙にし、今回の事件の白黒が決着するまで謹慎となるが、少なくとも来年4月までの謹慎が有力だ。謹慎中の生活について海老蔵は「人としてあるべき姿、きちんと生きることを最前提に考え過ごしたいと思います」と話したが、そこで浮上したのが山ごもり計画だ。

 実は海老蔵は新之助時代の02年、市川宗家が信仰する成田山新勝寺の青年僧とともに山伏姿になって大峰山入峰(にゅうぶ)修行を体験している。奈良県吉野から三重県熊野にかけて連なる大峰山に登り、数々の行場で修行した。「懺悔懺悔六根清浄(ざんげざんげろっこんしょうじょう)」と唱えながら山道をひたすら登り、奇岩連なる行場を命綱なしで挑む過酷なもので、2人がつかんでいるだけの命縄を背中に巻いて崖から落とされる修行も経験した。海老蔵襲名前の04年3月には成田山に参籠し水行、108回の礼拝、諸堂巡拝もしている。

 当時、海老蔵は「修行で自分の平常心がとても鍛えられました」と話していた。妻麻央に「生まれ変わらないといけませんね。人としての精神、心を勉強し、少しでも成長するように心がけましょう」と言われた海老蔵にとって、一から出直すための人間修行の場ともなる。今後、体力とけがの回復を待って本格的な修行に入るとみられる。

 無期限謹慎と90分のロング会見の裏には父市川団十郎(64)の意向があったことも分かった。謹慎は松竹が決めたが、団十郎も「厳しい処分にしてください」と要望したという。さらに会見には付き添わなかったが、その前には海老蔵に「会見ではどんな質問が来ても、真摯(しんし)にはっきり答えなさい。時間が延びても、質問が出終わるまで最後までやめないでやりなさい」と諭したという。

 無期限謹慎により松竹や出演CMのメーカー、来年2月に出演予定だった名古屋・御園座、御園座公演関連の特番がお蔵入りになったテレビ局などに与えた損害は計5億円を超えるという。口先だけではない「生まれ変わり」が求められている。

 [2010年12月9日10時4分

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