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さっぱら「働く人」の記憶~新しい駅前通りの地下道を歩いてみて

2011年06月28日 21時05分29秒 | 街角と道端のアート
 札幌駅と大通地区を結ぶ「札幌駅前通地下歩行空間」が3月、開通した。
 筆者はいま、札幌から300キロ離れた土地に住んでいるので、この地下歩行空間を歩いたのは3度ほどしかない。

 札幌は積雪・厳冬期が長く、ふたつの繁華街を結ぶ地下通路の開通は、多くの人に歓迎されていることだろう。

 ある日、地下歩行空間で、ディスプレイを見た(冒頭の画像)。
 時、分、秒を表示する画面がわかれて表示されている。

 筆者は、或る年の「サッポロ・アート・パラダイス」(略称さっぱら)で道教大の学生たちが展開したパフォーマンスを思いだした。

 1997年9月26日、北海道新聞夕刊「文化面」の記事を引用する。
 ちょっと長いけど、読んでみてください。

サッポロ・アート・パラダイス 市民も作品に参加 ユニーク発表続々

 街のまん中で美術作品の制作やパフォーマンスをやろうという「サッポロ・アート・パラダイス(さっぱら)」(同実行委主催)が、二十一日からの三日間、札幌市中央区の大通公園を会場に開かれた。昨年に続き二回目。ユニークな立体作品や発表が多く、連日市民でにぎわった。

 同公園七、八丁目での立体造形制作には一般公募と推薦による二十三組が出品。通りがかりの市民も何らかの形で参加できる作品が多かったのが特徴だ。

 学生らによる「ピリピリ」チームの「働く人」は、「20世紀1997年9月〇日〇時〇分〇秒」という現在の時間を日めくりカレンダーのような形で表示する作品。朝から夕方まで、秒を表示する紙は一秒毎に、分の紙は一分毎にめくる。メンバーは大忙しだったが、紙めくりに加わる市民もおり、「時間を視覚化する」という狙いは達成できたようだ。

 札教大の学生による「泡工場」は、せっけん水の入った水槽にぐるぐる巻きのチューブを浸したり揚げたりするとシャボン玉がたくさん出来るという単純な作品だが、子どもたちは大喜び。

 札幌大谷短大の「ヨナさんギャラリー」は、牧草ロール用の白いポリエチレンを膨らませた長さ十メートルほどの大きなトンネルで、内壁に自由に絵が描けるとあって、計四百人以上が落書きを楽しんだ。鉄パイプ約百三十本を複雑につなぎ合わせ、伝声管に変身させた札教大チームの「パイピングパイプマン」も人気を集めた。

 そのほか、ドイツの二人組「ピエトン」によるパフォーマンス、パントマイムや沖縄音楽演奏、写真やお面制作のコンテストなど、盛りだくさんの内容だった。

 コーディネーターとして企画に加わった画家の米谷雄平さんは「昨年よりかなり充実した。そろそろ札幌の行事として定着するのでは」と話す。さっぽろ雪まつりなどとはひと味違った公園の活用法としても注目されそうだ


 どうですか。
 文章を読むだけで、楽しい雰囲気が伝わってこないだろうか。

 すくなくとも近年は、こんなに楽しいアートの催しは、札幌では少ないように思う。

 「さっぱら」が開かれていたのは1996~2000年。
 2001年からは、大道芸の祭典「だい・どん・でん!」などに発展的に解消されたらしい。



 北海道や札幌の美術の歩みを知ろうとする人は、まず「北海道の美術史」(吉田豪介著、共同文化社)をひもとくだろう。
 ただし、この本は1995年の発刊だったはずで、当然のことながら95年以降のことは書いていない。

 また、インターネットの普及が始まるのは、95年のウィンドウズ95発売以降だが、しばらくは通信環境などの問題もあって、多くの人が発信するようになるまでには数年がかかった。
 筆者がウェブサイトを開設したのは2000年暮れ。この時点ですでに存在しており現在も継続している道内のアート関係サイトといえば、渡邉真弓さんの「allo?」くらいしか筆者には思い浮かばない(ほかにもあったらごめんなさい)。

 というわけで、90年代後半~2000年というのは、いわば「エアポケット」みたいになっていて、この期間のことはググってもほとんどわからないのだ。
 
 あと、札幌の現代美術かいわいでいえば、端聡さん、上遠野聡さん、伊藤隆介さん、磯崎道佳さんあたりの世代と、武田浩志さんや久野志乃さん、高橋喜代史さんといった世代の間がぽっかりあいているような気がする。
 それも、90年代後半の記憶が引き継がれていない要因なのかもしれない。


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